「あ〜・・・・・もういい。とにかく・・・ジャンクを殺るぞ。ブラム、前衛を任せる。」
「うん!」
ブラムが子供のような返事をした後、ゴラはぶつぶつと何かを唱え始める。
それと同時にブラムは背中にかけてあった小型のトマホークを握りしめ、ジャンクに向かって走り出す。
「あ〜、やる気満々だな。できれば殺生はしたくねぇんだが。殺るしかねぇか・・・。」
ジャンクは少し暗い表情で大剣を背中から取りだし、両手で構え相手の出方を窺う。
「喰らえ!!」
ブラムがジャンクに向かってトマホークを振りかざす。ジャンクもそれに応じて大剣を振りかざし、ブラムを吹き飛ばす。
「なかなかやるじゃねぇか。」
「お前に褒められるなんて光栄だよ。」
ブラムは褒められてうれしいのか、口元をゆがませて笑う。その際ブラムは少しゴラのほうへ目線を映した。
「よそ見している暇があんのか?」
ブラムがよそ見している一瞬のうちにジャンクは吹き飛ばしたブラムの目の前まで走り、切りかかる。
ブラムはとっさに反応してこれを防ぐが、さっきよりも派手に吹き飛んでいく。
吹き飛んだあと、ブラムは地面に激突する前に何とか受身を取りダメージを軽減する。
少しだけブラムの息遣いが荒い。
「どうした?もう来ないのか?」
ジャンクはブラムに挑発を仕掛けるが、ブラムは挑発にのらずにそのまま待機し、呼吸を整えている。
「そっちがこねえならこっちから・・・!」
ジャンクが仕掛けようとしたそのとき、あたりの地面が少し揺れ始め直径3〜4メートルほどの茶色の魔方陣が浮き出てくる。
ジャンクはこのままこの位置に居てはまずいと悟り、すぐにその場から離れた。
その瞬間に呪文が完成したのだろう。ゴラが呪文の名を叫ぶ。
「グランド・スピア」
グランド・スピアと呼ばれた魔法は魔方陣の大きさを範囲に、大きなの岩の槍が地面から数え切れないほど突き出てくる。
「魔法ってやつか、お〜おっかねぇ。」
ジャンクは間一髪でこれをよける。あと数瞬ほど遅れていれば、ジャンクは岩の槍で串刺しになっていただろう。
「よくかわしたな。だが、余所見をしている暇はないんじゃないのかな?」
ゴラの言うとおり、魔法攻撃の後にブラムがジャンクに追撃を仕掛ける。
ジャンクはそれに対応するために大剣でブラムの攻撃を受ける。
それを見てゴラは口元をゆがませ、ニヤリと笑う。その後にまた、呪文を唱え始める。
このまま長期戦に持ち込めば、ジャンクは確実に負けるだろう。
(まじいな・・・)
ジャンクはブラムを大剣でブラムを吹き飛ばした際に、背中にあるもう一つの得物でどうにかしようと考え、行動に移す。
ジャンクはこの獲物を使って反撃に移るため、ゴラとブラムが直線上に並ぶように、
立ち居地を少しずつずらしながらブラムの攻撃を対処する。
「そら!そら!そら!」
「くっ!!」
ジャンクはブラムの攻撃に耐えて少しずつ、少しずつゴラとブラムの姿が重なっていくのを確認する。
そして、立ち居地が直線上になったとき背中の獲物に手を伸ばした。
「ブラム!!これでも・・・・」
ジャンクは獲物を投げる体勢をとる。それと同時にブラムは攻撃を回避するために行動に移る。
「喰らいやがれ!!!」
ジャンクが獲物を投げた。
ブラムは、何かを投げる姿勢の時点で回避行動に移っていたため、その攻撃をぎりぎりで避けた。
「うわっ!あ、危なかっ・・・・」
ブラムは本音を言うが、途中で言うのをやめた。
「そ、そんなもの、当たるか。」
ブラムは胸を張りバレバレのハッタリをかます。
「残念だが・・・・今、確かに決まったぜ?」
ジャンクがブラムの後ろを指差す。「そんなはずはない」とブラムは後ろに振り向く、
そこには円盤状に見える獲物で体を上と下に切り裂かれ、血を切り口から噴出したゴラの姿があった。
「そんな・・・・・嘘だよね?ゴラ兄ちゃん。何で・・・・・・」
ブラムはゴラの死体を見て放心状態になり、手で握っていた小型のトマホークが地面に落ちる。
ジャンクはブラムを大剣で切り裂く。
「わりぃな。俺もできれば殺しはしたくなかったんだが、こちとら沢山の命を預かってんだ。」
ジャンクは表情を暗くし、ブラムだった物体に話しかけた。
ジャンクの瞳には悲しみの色が混じっていた。
ジャンクはゴラを切り殺した獲物をとりにいく。
その獲物は今、地面に突き刺さっている。それはとても大きなトマホークだった。
「できれば、こいつは使いたかぁなかった。血に飢えたこいつだけは・・・。」
ジャンクはトマホークを地面から抜き取り、それを大検と一緒に背中にかける。
「ジャンクおじさ〜ん。」
ジャンクが呼ばれたのに気づいてその方向を見てみると、門から出てきたのだろう。
リュークがこちらのほうを見て手を振っている。
ジャンクも門に向かいながら手を振り返す。
それと同時に死んだはずのゴラの上半身が動き出す。
「こんな時間にどうしたんだ?リューク。」
ゴラが苦しそうにだが、ジャンクのほうへ顔を向けて呪文を唱えていく。
「えっとその・・・おじさんに会いに・・・・・。」
呪文が完成し、ゴラの手の周りに光が集まっていく。
そして、その光が集まりきるとジャンクに向けて放たれた。
「アッハッハッハッハ・・・・コフゥ」
ジャンクはなぜ血を吐いたのかが分からず、自分の体を確認する。自分の体の胸あたりにぽっかりと一つ穴が開いていた。
何かを放たれたほうへとジャンクが振り向くと、さっきとは体勢の違うゴラの死体が転がっていた。
「すまねぇ・・・アキト・・・・・ドジっ・・・た・・ぜ・・・・・。」
そのままジャンクは倒れこんだ。
目の前にいる少年に恐怖心を植え付けて
「あ・・あ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」
ジャンクは眠りについた。永久の眠りに。
そして、ゴラの上半身はそのまま動かなくなった。
「クソ、何てことだ。まさかブラムが死ぬなんて思わなかったぞ。」
先ほど死んだはずのゴラが森の中を走っている。
「あの人からもらった力で作ったドッペルゲンガーがいとも簡単に・・・だが、ジャンクにとどめはさした。
ブラックリストの上位「殺さず」のジャンクはな!!」
ゴラは口をゆがめて笑う。
「ん?お前ははあのときの・・・・・」
ゴラは走るのをやめ急に出てきた三人に話しかける。その三人全員、左手首から先がない。
「なぁ、あんたたち、俺に協力してくれ。あんたたちがいれば俺はあの町を潰せる。」
ゴラが話しかけた三人は少しゴラの様子見をしてから、ゴラに対して武器を構える。
一人は異形の短剣を、一人は異形の大剣を、一人は異形の杖を・・・
「ハァァァァアアアァァァアア・・・・・」
双剣を持った人と大剣を持った人がゴラに襲い掛かり、杖を持った人は呪文を唱え始める。
「嘘だろ?・・・やめてくれ!!・・・や・・やめろぉぉぉぉぉぉ!!」
ゴラは双剣を持った「人」と大剣を持った「人」に三角形に切り刻まれ、
最後に杖を持った「人」にYの字に近いアスタリスク型の魔法攻撃を受け、粉々に散った。
その後、その三人は姿を消した。
その森にゴラを刻んだときにできた赤い軌跡が痛々しく残った。
NEXT エピソード6
-あとがき-
ようやくここまで来ました。
次回でプロローグ編が終わります。
・・・多分・・・・・・。