「ロストロギアですか?」

 ロストロギア−過去に滅んだ超高度文明から流出する、特に発達した技術や魔法の総称。彼女と争い、親しくなるきっかけを作る事になったジュエルシードもそれだったなと思いながら、フェイトはリンディの話を聞いていた。

「えぇ。それで、これは異例なことなんだけどフェイトさんにも今回の調査に一緒に行ってもらいたいのよ。頼めるかしら?」

「私も、ですか?」

 フェイトは突然の依頼に戸惑ってしまう。
 それも仕方のないことで、本来フェイトは仕事を依頼されるような立場にいないのだ。

「わかりました。そのお仕事、請けさせてもらいます。」

 しかし申し訳なさそうな顔で尋ねてくるリンディを見て、フェイトは引き受ける事にした。
 本来なら罪人であるはずの自分に善くしてくれ、さらに弁護までしてくれた人の頼みを、フェイトは断る気など本より無かった訳ではあるが。

「そう? 引き受けてくれるのね。ありがとう、助かったわ。正直人手が足りなくて、猫の手でも借りたいくらいだから。お礼と言っては何だけどさらに刑が軽くなる様に掛け合ってみるわ」

 それを聞いてフェイトはさらにこの人のことを嫌いになれないな、と思った。





        『魔法生徒!? リリカル・アキト! プロローグ』


         


 『機動戦艦ナデシコ』

 これがこれからテンカワ・アキトが働くことになる戦艦の名前である。
 アキトは最初この名前を聞いたときに民間企業が造った戦艦らしいな、と思った。
 その印象は違っている訳ではなかった訳だが。

 事実ナデシコは一般の軍艦には在りえないほど居住性に優れている。そのことは色々なシチュエーションを仮想空間で体験できる装置のある、バーチャルルームが在る事からもうかがえる。

 本来アキトは軍隊嫌いである。それはアキトの故郷であった火星に、異星人の兵器が進行して来た時に防ぎきれなかった事が大きい。
 そんなアキトが戦艦に乗る事になったのには訳がある。

 異星人の兵器が火星軌道上の戦闘を征し地上制圧に乗り出したとき、アキトも機動兵器に襲われた。その後彼が目を覚ました時には何故か地球に居た訳だが…。
 生まれてこの方火星から一度も出たことの無いアキト。当然ながら路頭に迷うこととなる。

 そんなアキトを救ったのが、下町で食堂をやっているサイゾウだった。
 彼はアキトの事情を聞き、ここに住み込みで働かないかと持ちかけてきたのだ。
 このことはアキトにとって幸運だった。なぜならアキトは幼少の頃の記憶からコックを目指していた。

 結局アキトが断るはずも無く、次の日から働き出す事となった。

 しかしアキトには問題があったのである。

 一つ目は機動兵器に襲われた時にできたトラウマ。
 近くで戦闘が起こるたびに体が動かなくなり、絶叫してしまうのである。

 二つ目はアキトが腰抜けパイロットだと思われたこと。
 アキトは幼少の頃のとある出来事によりIFSをつけていた。
 IFSとはナノマシンを使った制御媒体のことで、火星では当たり前とまではいかないがかなり多くの人がつけている。
 だが地球ではパイロット以外ほとんどの人がつけていない。

 このことと、一つ目の問題によりアキトは腰抜けパイロットだと思われ、店の売り上げに響いてきたのだ。


 結局、この二つの問題のせいでアキトはサイゾウの所を首になる。首になる際に言われた「逃げてるだけじゃ、お前なんにもなれはしねぇぞ・・・」というサイゾウの言葉が心に残ることになる。

 そんなこんなで再び路頭に迷っているアキトに声をかけたのが、赤ベストにちょび髭の男−プロスペクターだった。





「あなたの話を疑う訳ではないのですが確認のために身元確認をしたいので、腕を出していただけますかな?」

 プロスペクターにそう言われアキトは腕を差し出す。

 差し出されたアキトの腕にプロスペクターはなにやら棒状のものを押し付けてくる。

「痛っ!?」

 わずかな痛みが走る。その痛みが引くか引かないかする内にどうやら身元確認は終わったようだ。

「テンカワ・アキト、火星ユートピアコロニー出身。…どうやら間違いないようですな。よろしい! あなたは今日からナデシコのコックさんです! ああ、後私のことはプロスと呼んでください、テンカワさん。」

 プロスの言葉を聴いてアキトはほっとため息を漏らす。

 正直なところ戦闘は怖い、しかしここで雇ってもらえなければ明日から路頭に迷うことになる。
 それよりもナデシコの行き先のほうがアキトの気を引いた。

 なぜならナデシコの行き先は火星らしい。





「テンカワ・アキトです! 至らない所はたくさんあると思うっすけど、よろくお願いします!」

 プロスによってナデシコに雇われた3日後、アキトは自分の職場になる食堂に挨拶に来ていた。 

「まあ、そう硬くなることはないさね。あたしの名前はリュウ・ホウメイ。こちらこそよろしく頼むよ。正直な所、男手がまったく無いときついからね。助かるよ」

 厨房に若干の緊張を含んだ声が響き、それに若干苦笑が混じった返事が返る。

 厨房長のホウメイは、これこそコック! またはザ・アイアンシェフとでも言いたくなるようなオーラを持つ女性だった。 そのほかに調理補助兼ウエイトレスの女の子が5人。確かにまったく男手が無い。それに200人以上の人が居るナデシコでコックが一人というのは相当キツイ。
 もっともそこにアキトが加わってもコック2人。だがまだアキトが半人前な事を考慮に入れればコック1.5人、総勢7人では大して変わりないわけではあるが。

 ホウメイの自己紹介が終わった後に、残る5人の女の子が次々とアキトに自己紹介をしてくる。
 それぞれが個性的であり、アキトはうまくやっていけそうだと思った。

「よろしくお願いします、アキトさん。話は変わりますけど私たちってちょうど五人じゃないですか? というわけでグループ名でも考えてみようっ、て事になったんですけどアキトさん何かいい案ありますか?」

「へ? うーんとそうだな・・・。ホウメイガールズとか?」

 アキト、安直である。最も女性陣には結構好評のようではあるのだが。





「よう。あんたが俺のルームメイトかい? 俺の名はダイゴウジ・ガイ。ま、ガイって呼んでくれや」

 厨房の挨拶が終わり自分にあてがわれた部屋に行った時に掛けられた言葉がこれである。

「ダイゴウジ・ガイ? ネームプレートにはヤマダ・ジロウって書いてあったけど?」

 アキトは名前の相違に首をかしげる。部屋に入る前にネームプレートを見て確かめていた名前と違っていたのだからしょうがない。

「うっ!?…それは世を偽る名前、ダイゴウジ・ガイは真実の名前。魂の名前なのさ!!」

 本人曰くダイゴウジ・ガイはビシッと言う効果音が合いそうなポーズをつけアキトを指差してくる。
 その男の行動を受けアキトは苦笑いを浮かべた。
 それって偽名なんじゃ? とか魂の名前って何だよとか、これまた厄介な奴と同室になったな等と内心思いながら、ふと壁のほうに目を向けてみる。
 
「これって…。ゲキガンガー3!?」

 壁にはプロジェクターを使ってロボットアニメが写されていた。
 その内容を見てアキトは驚いた。映っていたものはゲキガンガー3。アキトが子供の頃見ていた100年位前に作られたものだったからである。

「お! ゲキガンガー3知ってんのか!?」

 アキトがゲキガンガーの名前を出したとたんダイゴウジ・ガイは、子供のような笑顔を浮かべながら「ゲキガンガーを好きな奴に悪い奴はいねぇ。一緒に見ねーか!」と誘ってきた。

 その行動を見てアキトは悪い奴ではなさそうだと認識を改めた。ダイゴウジ・ガイという名前もプロスさんと同じようなペンネームみたいなものかと思い、これからは本人の言ったとおりガイと呼んでやろうと思った。
 
「悪い。見たいのはやまやまなんだけどさ、俺まだナデシコの事一通り回ってないからその後でもいいかな?」

 待ってるぜ!というがいの返事を受けながらアキトは部屋をあとにした。
 その後アキトはゲキガンガー3に多いにハマる事となる。
 
 これがアキトの人生に影響を与える人物とのファーストコンタクトだった。
 最もガイは多少というだけで、この後会うことになる人物が本当の意味で影響を与える人物になるのだが。





 図書館、バーチャルルーム、格納庫など色々と見て回った後アキトはここ、ブリッジに来ていた。
 一応出前などのときに来る可能性もあるので顔見せもかねている。

 ブリッジに来たアキトは、操舵手のミナト、通信士のメグミそれぞれと挨拶したあと最後の一人に声を掛けた。
 ブリッジに居た3人は一直線に並んでいて最後の1人は真ん中に座っている。そのため本来なら別々に声を掛ける必要は無く、別々に話しかければ手間が増えるだけである。

 正直なところ、アキトはどう話しかけたらいいか迷っていた。なぜなら最後に残った1人は10歳位に見える女の子だったからだ。

 彼女は空色の様な銀髪に琥珀色の瞳を持っていた。
 その少女を見たときアキトは綺麗な子だなと思うと同時に、なぜ戦艦にこんな子供が居るのか? と疑問に思った。

 少女は他の二人に挨拶をしている間、われ関せずといった雰囲気でなにやら操作をしており、アキト自身まだ多少の戸惑いはあったが意を決して話しかけることにした。

「えっと…。さっき二人に挨拶したときに聞こえていたと思うけど、俺の名前はテンカワ・アキト。コックなんだけど場合によっては俺が出前を運んでくることもあると思うから、よろしく! それで…、君の名前は?」

 ここまで一気に言って、アキトは少女の返事を待つ。

「私こそよろしくお願いします、テンカワさん。ホシノ・ルリ、オペレーター、11歳です。ルリでいいですよ、なれてますから」

 これが本来ならアキトの運命を変える事となる少女とのファーストコンタクトだった。















 今回発見されたロストロギアはなのは達の世界にあるらしい。

 これは異例な事と言えた。
 なぜならなのはたちの世界には、ほとんど魔力を持った人は存在しない。それゆえに魔法が存在しないのだ。

 最も一度文明が滅び、それにより魔力を持った人間が居なくなったと考えることも可能ではあるのだが。

 それはともかくとして、今回発見されたロストロギアはジュエルシードに近い性質を持っているらしい。
 ジュエルシード−かつてフェイトの母親−プレシア・テスタッロサが死者蘇生をも可能にする技術を持っていたと言われるアルハザードに行くため、フェイトに集めるように強要した物だ。
 このことによりフェイトは、先にジュエルシードの発掘者とともに収集をしていた少女、なのはと争うこととなる。

 この争いはロストロギアを収集・管理する時空管理局を巻き込み、最終的にプレシアが次元の狭間に落ち行方不明となることで決着がついた。
 後にプレシア・テスタロッサ事件と呼ばれることとなるこの争いにより、フェイトはいくつかの罪に問われることとなる。

 なのはとは全力全快のなのはの気持ちを伝えられ、頑なになっていた自分の心を開かれる事となり、文字道理拳で語り合った親友となったのであった。
 
 またフェイトの生い立ちもわかった。
 フェイトは死んでしまったプレシアの娘−アリシアと同じ姿を持ち同じ記憶を持たされ生み出された人工生命体だったのだ。

 そのようなことを経てフェイトは現在に至る。




 
「フェイトさん…。ほんとに無理はしなくてもいいのよ?」

 リンディが心配そうにフェイトにたずねてくる。
 今回のことは軽率だったかもしれないとリンディは思った。思えばプレシアのことに整理をつけるのにはまだまだ時間がかかるのだ。
 それなのに自分は彼女の母親を思い出させるようなことを依頼してしまった。

「いえ、大丈夫です。母さんの事はいずれは整理をつけなけれはいけないことですから。それに今は体を動かしていたほうが気がまぎれます」

 沿う返してきたふぃとを見てリンディはこの子は強い子だな、と思いながらロストロギアが見つかった場所の説明をすることにした。

「今回見つかったロストロギアの場所は、なのはさんの世界のなのはさんが住んでいる星のお隣の星−火星の極冠よ」















 ナデシコは今回火星まで来た目的である、ツムリが建設されている火星極冠遺跡まであと少しというところまで来ていた。
 ツムリとは巨大なマイクロブラックホール砲のことで、もし地球に向けて発射された場合地球そのものが無くなってしまう、という計算結果がイネス・フレサンジュによってもたらされている。
 幸いなことにこのツムリは未完成だったために地球圏の戦艦で最も速くかつツムリを確実に破壊できるグラビティブラストを持っているナデシコが抜擢されたのだ。

 またこのツムリのプロトタイプと思われるナナフシを地球引力圏を脱出するときに撃破している。

 ここまで来るのにも紆余曲折があった。

 まず艦長のミスマル・ユリカとアキトが幼馴染ということがわかった。

 次にナデシコが出航前に敵の襲撃にあったのだ。
 このときあまりの敵の数の多さに唯一のパイロットであるガイだけでは対応しきれず、ナデシコの中で唯一IFSアキトがパイロットとして出撃させられたのだ。
 その後なし崩し的にアキトはパイロットを続ける事となった。

 この後、追加パイロットとしてアカツキ・ナガレが、副操舵手としてエリナ・キンジョウ・ウォンが配属されナナフシを撃破する。

 地球圏を離脱した後にパイロットとしてナデシコに参入予定だったスバル・リョウコ、アマノ・ヒカル、マキ・イズミの3名が機動兵器エステバリスとともに取り残されているという情報が入ったために救助に向かい、その後月面に進行してきた敵の新兵器と交戦しこれを撃破。
 この敵の新兵器はボソンを用いた瞬間移動を使ってくる厄介なものだった。
 その後この敵の瞬間移動はボソンを用いていることからボソンジャンプと名づけられる。

 この後火星軌道上での戦闘や敵の罠に掛けられながらもようやくここまで来ることに成功したのである。





「テンカワさん、こんにちは」

「あ、ルリちゃん。こんにちは。注文は何にする?」

「チキンライスをお願いします」

 アキトとルリはルリがジャンクフードしか食べないということをアキトが知って、食堂で食事させた一件があってから親しくなり始め今ではかなり仲がよくなっていた。
 最も仲良くなるまでの間にルリがハッパせんべいを大量に購入しているところをアキトが目撃したり、敵の砲撃でナデシコが揺れたときに転倒してしまいアキトがルリの胸を触ってしまったり、バーチャルルームで何回も遊んだり、ということがあったのだが。

「好きだね。チキンライス」

 ルリがチキンライス好きになったのにも訳がある。
 もともとご飯やパスタといった主食が嫌いな為にジャンクフードを食べていたルリを、主食好きにしたのがアキトのチキンライスなのだ。
 つまりルリにとって、アキトのチキンライスは特別なのだ。

「あそうだ。ルリちゃん、2時間後に展望室に来てくれないかな? 大事な話があるんだ」

 アキトは少々どもりながらルリに話しかける。

「大事な話ですか?」

「うんそう。大事な話なんだ」

「わかりました。2時間後ですね?」

 ルリは何だろうと思いながらも、アキトが真剣な顔をしているので受けることにする。
 ルリの返事を受けたアキトが若干緊張が取れた顔をしていたのが印象に残った。





「ルリちゃんと約束したんだ、必ず生きて帰ってこなくちゃな」

 アキトはルリに身寄りが居ないことを聞き先ほど、この戦いが終わったら一緒に暮らさないかと提案したのだ。
 ルリはアキトの提案を迷惑を掛けてしまうと一旦は否定したものの、「つらいことは半分に、楽しいことは2倍に」というアキト言葉を受け了承したのだ。
 もともとルリはアキトに幼い恋心を持っていたし、アキトが自分と同じで身寄りが居ないということで断りたくなかったのだ。

「アキト君!」

 と、物思いにふけってたアキトに声が掛けられた。イネス・フレサンジュだ。

「イネスさんじゃないですか。どうしたんですか?」

 普段格納庫にきたりしないイネスが居ることをアキトは不思議に思った。
 イネすはどことなくあせっているような雰囲気をかもしながら、アキトの手に大き目の懐中時計のようなものを押し付けてくる。

「あの、これなんですか?」

「お守りよ。もっときなさい。必ず役に立つから」

 普段のイネスらしくない行動に首をかしげながらも、結局イネスの行動に意味を見出せないままアキトは出撃することとなる。


 その後ナデシコのグラビティブラストによりツムリの撃破に成功する。ツムリのバリアを破壊しに行ったアキトごと。
 そして、アキトが火星極冠遺跡から帰ってくることはなかった…。














 目の前の立方体の箱から光の奔流とでも言える光があふれ出ている。
 
 いったい何が起こっているのかと、フェイトは思った。

 ほんの数分前までは何とも無かったのだ。
 それが突然稼動を始めたため退避命令が出されたのだが、フェイトだけが退避が遅れ取り残された。

 もしかしたらこれのせいなのかもしれないとフェイトは自分の手に視線を落とした。
 フェイトの手にはひし形をした青い宝石が乗っていた。

 フェイトにはこの宝石の正体が何なのかは予測が立っていた。
 彼女が使うインテリジェントデバイス。バルディッシュと同じものだと。

 フェイトはこの後の展開に備えるためにバリアジャッケトを展開する。

 その直後、立方体から一際強い光が放たれた。

 その光が収まった後フェイトの姿はそこには無かった…。





これが彼と彼女が別世界に渡ることとなった経緯である。
プロローグEND

あとがき

皆さん始めまして。片瀬優希冬香です。

以前ウェブ拍手で『ナデシコとネギまのクロスを送るかもしれません。もしかしたらリリカルな展開に』と送ってからだいぶたってしまいました。

一応本編説明をば。

ナデシコはテレビ版ではなくセガサターンの一作目のゲームを基本に若干オリジナルな展開を入れています。
ゲームの内容をほぼ全編入れたために説明が多くなってしまいました。(汗)

気づいた人が居るかどうかはわかりませんがイネスは逆行イネスです。
また渡したものは…。ネギま好きな人ならわかりますよね?


リリカルなのはについては無印終了後ということになります。


この後アキトとフェイトはネギまの世界に行く事となるのですが…。
ちょっとご都合主義的な展開があるのでその辺は許してください。


最後に、自分は超遅筆ですので一ヶ月に一度くらいのペースで投稿できたらと思います。
それではまたお会いしましょう!!

管理人の感想(久ッ
え〜、今回からは全員に感想付けたいなと思うハイ・ライトです。
はー、なるほど。
リリカルの方からはフェイトですか…んでアキトは黄色い方と。
むぅ、展開が読めん。
アキトとフェイトがどう絡むのか、気になるところです。
では、次回楽しみにしてます。
……これ、感想じゃない気がしてきた