2203年、ミスマルユリカを救ってから二年の月日が流れた。

天川アキトは火星の後継者残党を殲滅するべく、

エステバリスの次世代機『サレナプロジェクト』の試作機を駆りながら

ラピス・ラズリと共に残党の影を追って各地を転戦していた。

そして、その戦いも最後の時を迎えようとしていた。

ネルガルが用意した輸送用シャトル船が宇宙を進む。月と火星の間に在る、廃棄コロニーを目指して

シャトル船はその場所に貨物を送り届ける為ではない。死と言う破滅を彼等に運ぶ為に船は進む。

彼等とは火星の後継者、かつてボソンジャンプの掌握を図り、

「新たなる秩序」を合言葉に、クーデターを起こした集団のなれの果て。

そのなれの果てと化した火星の後継者残党が、廃棄コロニーに潜んでいた。

火星の後継者は草壁の乱、南雲の乱と二度の叛乱の失敗により、

主だった組織の運営メンバーが逮捕、処罰されて、

後援者だったクリムゾングループも、南雲の乱の境に完全に支援を打ち切った。

進退窮まった火星の後継者はその後、軍による掃討作戦、

天川アキトによる執拗な狩りなどで、組織機能を失い。

辛うじて逃げ延びた少数組織が、宇宙海賊の真似事をしながら、細々と活動を続けていた。

だが、もうじきその活動も完全に潰える事になるだろ。

なぜなら現存している火星の後継者は、一グループだけしか生き残ってないからだ。

これから向かう輸送用シャトル船の目的地、廃棄コロニーに潜伏する火星の後継者の組織こそが

軍と天川アキトから唯一生き残った。最後の組織なのだから。



「アキト・・・もう直ぐ付くよ」

ラピスが心配そうにアキトの顔を覗く、アキトは輸送船の操縦席でただ、何も無い宇宙空間を眺めていた。

その姿は今にも消えてしまいそうな、儚さを出していた。

「アキト・・・」

アキトは何時もと変わらない。だけど今日は言葉で言い表せない、何かが違うような気がした。

いや、そう感じる。それが何なのか私には分からない。

怖い、怖い、なんだが凄く怖い。アキトと心が繋がっているのに、

アキトの事が分からない。アキト・・・私は・・・

アキトの五感を補助しているラピスは、近頃漠然とした不安を抱いていた。

アキトの戦いが終わろうとしていたからだ。この戦いが終わった後、アキトはどうなるのか。

そして自分はどうなるのか、これからもアキトと一緒に居られるのか?

それとも離れ離れになってしまうのか、アキトは知っているのか、この先の事を自分のことを・・・

「アキト・・・」

・・・アキトは何も答えてくれない。私はアキトの事を知りたいのに

アキトも私のことを知って欲しいのに。

私はアキトの目、アキトの耳、アキトの手、アキトの足、アキトの半身、アキトのパートナー、

アキト何処にも行かないで、ずっと私と一緒に居て。

アキトと一緒に居られだけで私は何も要らないから、私を置いて居なくならないで、アキト!

私は・・・アキトが好き・・・

「時間だラピス、・・・これが最後の戦いになるだろ」

そう言うとアキトはラピスに振り向いた。

ラピスは一瞬、ドキっとした。今までアキトの事を思考していたので、

突然アキトに話し掛けられ。自分の秘めた想いがアキトに、伝わってしまったんじゃないかと心配するが

アキトに動揺は無く、何時も通りだったので、直ぐに冷静さを取り戻した。



ラピス、もうすぐ全てに片がつく。全てが終わった時、俺は生きていられないだろ。

・・・・・すまない、ラピス。お前の気持ちには答えられそうに無い。

俺が居なくなっても、お前は自分の幸せを見つけて欲しい。それが俺の最後の願いになると思うから

天川アキトとラピス・ラズリは、ナノマシンを通じて、テレパシーの様な物でリンクしており、

そのリンクによりお互いの感覚と表層意識を共有していた。

だから、アキトはラピスの気持ちにある程度気付いていた。気付いてはいたが、どうする事も出来なかった。

火星の後継者の人体実験によってぼろぼろにされた肉体は、もう直ぐ限界を迎えようとしていたからだ

限界を超えた先にはあるのは、死と言うラピスにとって悲しい別れ。

悲しい別れがこの直ぐ先に待っている。だからラピスの想いに答えられない。

俺は・・・最後の最後まで卑怯な男だな。

結局ラピスに何もしてやれなかった。俺の復讐に巻き込んだだけ。なんの恩返しもしてやれなかった。

ユリカ、ルリちゃん。今の俺を見たら、君たちはどう思うのだろうか。

こんな、狂気に取り付かれた人間を、天川アキトとして見てくれるのだろうか。

それとも・・・いや、今考えるのはよそう。これから戦いなのだ。

迷いは隙を生み出す。今更迷ってなど居られない。全てはこの時のために、命を削ってきたのだから。

だから最後まで歩みを続けなければいけない!あの時、決めたのだから。

『奴等に復讐を果し、この世から消し去らなければならない!』



アキトは操縦席を立ち、ラピスと共にシャトル後部の貨物室へ向かう、

その場所にある、灰色の人型機動兵器に乗り込むため

第三世代試作型機動兵器「バンクシア」、ブラックサレナに変わるアキトの新しい心の鎧

花言葉は『勇気ある恋』『濃厚な愛情』『心によろいを着る』

バンクシア・・。俺の復讐とネルガルの思惑で誕生した機動兵器

お前の役目も・・・もう直ぐ終わる。こんな俺に付き合ってくれてありがとう

アキトとラピスは、共に貨物室に入り、機動兵器パンクシアを見上げていた。

これまで一緒に火星の後継者と戦って来た愛機、幾多の戦場を掛けてきた。もう一人の物言わぬ相棒

『たのしかった』

なぜか、そうパンクシアが答えてくれた様な気がした。

当然パンクシアにはAIは搭載されていない、だから答えるわけが無いのだが・・・

大切にした物には心が宿る、そんな事をウリバタケさんが言っていたな・・

俺がまだ一人で戦っていた時の事だ。色々無理をして、派手に壊れた時があった。

あの時、戻って来た俺にウリバタケさんが、パンクシアに感謝しろと言われた。

最初は何の事か判らなかった。でもウリバタケさんに後でその事を聞くと

自分の愚かさを恥じた。自分の身もまともに守る事が出来ていなかったからだ。

パンクシアの損傷は本来であれば、起動すら出来ないほど大破していた。

こうして無事に戻ってこれたのは、パンクシアがお前を守ってくれたからだと、ウリバタケさんに言われた

その言葉を裏付けるように、帰還した直後パンクシアは機能を完全に停止させた。

パンクシアはいつも無茶する自分を守ってくれていた。

それからだ、俺は少しでもパンクシアの負担を減らす為、無茶な行動はあまり取らなくなったのは

その後、パンクシアが二人乗りになり、ラピスが搭乗して来た。

いつも俺とラピスを守ってくれてありがとう。本当に世話になったな。

『どういたしまして』

ありがとう、パンクシア。お前のデータによってサレナプロジェクトも成功した

これでアカツキ達にも世話になった分、借りを返した。



『サレナプロジェクト』

ネルガルがエステバリスに変わる第三世代主力機動兵器を作り出し。

現在の機動兵器の主流となっている。クリムゾンのステルンクーゲルから

機動兵器のシェアを奪い返す事を目的としたのが。サレナプロジェクトである。

本来は第二世代機動兵器アルストロメリアが、その役目を果すはずだったが。

アルストロメリアの最大の問題点。コストダウンは構造的に無理と後に判明

さらにクリムゾンが先に、ステルンクーゲル用のジャンプユニットを開発してしまった為

アルストロメリアによる機動兵器のシェア奪還は、失敗に終わってしまった。

それが結果として新型機動兵器の開発プロジェクト(サレナプロジェクト)へと繋がっていく

第三世代機動兵器『サレナ』

プロジェクトの名前にもなっている「サレナ」は、エステバリスカスタムやアルストロメリアに変わる

ネルガルの第三世代機動兵器の正式な名称である。原型となったのは蜥蜴大戦中に失敗作に終わった。

ナデシコ整備班長ウリバタケオリジナル「Xエステバリス」

完成した暁には、エリスバリスの機動力と月面フレームのパワーが備わる予定だった

重力波フレームの先駆けと言うべき機体。

新型ジェネレータを搭載して、従来型の五倍の重力波変換効率を行なう事によって

小型グラビティブラストすら発射可能になる予定だったが、

五倍の重力波変換効率による、過剰なエネルギーのフィードバックに

フレームが耐え切れず自爆してしまうと言う。欠陥機に終わった。

その欠陥機Xエクスバリスを、ネルガル開発陣、ウリバタケセイヤ、イネス・フレサンジュ等で

新型機として再設計し直し、新型ブースターと小型相転移エンジン搭載して

完成させたのが、第三世代機動兵器サレナである。

全長10mとエステバリスやステルンクーゲル等、現在主流となっている機動兵器を

二周り程大きくした物で、大型機特有の弱点たる機動性は、新型ブースターにより

ステルンクーゲルの機動力をニ割を上回る程の高機動を可能にする。

そして小型相転移エンジンを搭載した事でジンシリーズと同等な

高出力ディストーション・フィールドを張ることができ、

ジンシリーズと同程度の短距離ボソンジャンプ機能を備える。

さらに小型相転移エンジンと言う動力を内部に搭載した事より、ステルンクーゲルと同じ

スタンドアローンが可能になった。これは大きな意味を持つ

従来のエステバリスやアルストロメリアでは、重力波ビームの供給範囲内と言う

限定した空間でしか活動する事が出来なかったが、小型相転移エンジンによりその足枷が無くなり

機動兵器の戦術的運用幅が広がる事になった。



さらにエステバリスと同じ、特殊フレームを装備する事で様々な状況に、対応する事が可能になった。

「重力波フレーム」

宇宙空間限定ながらジンシリーズと同等な、グラビティブラストを放つことが出来る。

「高機動フレーム」

ブラックサレナの高機動ユニットには及ばない物の、その高機動は従来の機動兵器の一線を超える

「電子戦フレーム」

ナデシコCの電子掌握すら防御する、電子偵察機

各種フレームの開発によって、あらゆる状況に対応する力を得た。これらによって

新型機サレナは万能高性能機として各方面軍、統合軍や連合宇宙軍に採用されていく。

特に電子戦フレームは、ナデシコCの電子掌握を防げるという事もあって。

軍、民間問わず各方面から大量受注を受ける。

これはナデシコCの電子掌握と言う、あまりにも大き過ぎる力に対する拒否反応でもあった。

草壁の乱以降ナデシコCは問題となり、モスボール封印されたものの、連合議会内には

その力が自分達に向けられる日が来るのでは、と言う心理的恐怖は未だに存在する。

その不安を完全に払拭できる事もあって。電子戦フレームは大好評となった。

サレナプロジェクトの成功により、ネルガルは蜥蜴戦争時に匹敵するほどの売上を記録して

クリムゾンのステルンクーゲルから、機動兵器のシェアを奪い取る事に成功した。

これらネルガルの一連の開発プロジェクトや新型兵器の開発、

そして機動兵器の売買契約には、実は天川アキトが深く関わっていたと言う裏がある

一体どう言う経緯でそういう流れになったか・・・。



天川アキトの母艦ユーチャリスは、ミスマルユリカを救った後。

コロニー襲撃犯の母艦として、あまりにも有名に成り過ぎたていたので。

今後の運用には適さないという観点から、廃棄する方向になった。だが、その廃棄方法が問題となった。

本来ならば、ユーチャリスを解体して部品を、再利用する事が当初の廃棄方法だったのだが、

アルストロメリアによる、機動兵器のシェア奪還に失敗した事により

急遽、新型機動兵器の開発プロジェクトを立ち上げる必要性が生じた。

しかし、開発プロジェクトを立ち上げるにも予算が無い。

その予算をどう確保するかで思いついたのが、ユーチャリスをナデシコCの試作艦として

連合宇宙軍に売却して、その売上金を開発プロジェクトに当てると言う物だった。

剣の様なユーチャリスの外装を、ナデシコシリーズの様に両脇にディストーションブレードを配置換えし、

偽装の為、純白なユーチャリスの配色に新たな色合いを加えた後

連合宇宙軍に売却する手筈つとなる。しかし、連合宇宙軍にも

ユーチリャスを購入するだけの予算が無い。そこでネルガル上層部はある茶番を思いついた。



天川アキトの愛機、追加装甲エステバリス「ブラックサレナ」を

連合宇宙軍の手により打ち倒させて、連合議会や市民からの信用を勝ち取り、

軍の予算を確保させると言う物だ。

連続コロニー襲撃犯として、幽霊ロボットは未だに指名手配されている。

統合軍は既に二度の叛乱に加担した事で、連合議会と市民から信頼を失い。

逆に連合宇宙軍は二度の叛乱を鎮めた功績がある。

連合宇宙軍は本来なら統合軍によって吸収合併され、解体待ちだった

しかし、ここで統合軍に変わり三度目の功績を打ち立てれば、

連合宇宙軍の組織存続は確定的となり、組織再編の為の予算が議会から回されることになる。

ネルガルにとっても連合宇宙軍にとっても。

両者の利益が一致したこの茶番劇は、早い段階で実行に移される事になった。

ブラックサレナに、バッタに搭載されている無人兵器用のAIを組み込んだ後。

無人のまま出撃させて、巡回中の連合宇宙軍艦隊に攻撃を仕掛けた後

相手の攻撃に合わせて自爆する用に、プログラムを予め組み込んでおいた。

連合宇宙軍艦隊のグラビティブラスト一斉放射に合わせて、

ブラックサレナは自爆し、残骸すら残らず完全に消滅した。

これによって、ネルガルが幽霊ロボットに関わった一切の証拠は消え去った。

この後、コロニー連続襲撃犯の幽霊ロボットは、連合宇宙軍によって討伐された事になり。

連合宇宙軍の存続と新規予算配分が、正式に連合議会で可決された。

新たに充てられた予算を元に、ユーチャリスは連合軍宇宙軍に売却され、

ネルガルは、サレナプロジェクトを立ち上げる予算を確保する事に成功する。



ブラックサレナとユーチャリスを失った。天川アキトはその後もネルガルに留まり

サレナプロジェクトの試作機、バンクシアのテストパイロットを務めた。

試作機の実戦データ収集と言う名目の元、

火星の後継者残党に対して執拗な襲撃と、殲滅を繰り返す事になっていく。

彼の心を捕らえているものは、憎悪と罪の意識だった。

ミスマルユリカを救い出した所で彼の心は救われなかった。

今更誰にも救う事は出来ないのだ・・・全てが遅すぎた。

失われた五感と寿命は、時間と同じで二度と元に戻る事は無い。

彼が復讐と言う目的達成の為に、コロニー襲撃の際に無関係な人達を殺した命も二度と戻らない

己のやった事に対する罪の意識と、火星の後継者に対する憎悪の狭間で、彼の心は揺れていた

しかし、この揺らぎが止まる時、自分は確実に死ぬ。今生きていられるのは全て

火星の後継者を根絶やしにするという憎悪によって。

尽き掛けた命の蝋燭を強引に燃やしているに過ぎない。

壊れ始めた心と体を最後まで守っているのは狂気と言う名の鎧

『怖かろう。 悔しかろう。 たとえ鎧を纏おうと、心の弱さは守れないのだっ』

かつて北辰が言った言葉。ブラックサレナと言う鎧は消え去り。

心の支えを失った彼に最後に残された物、それは狂気と言う名の諸刃の鎧だけだった。



天川アキトは考えていた。一体自分は何がしたいんだと。

歩みを止めることは簡単だ、何もしなければいい。残党の処理は軍に任せて

己に残された短い時間を、ナノマシンが引き起こす痛みと罪無き人々を殺めた後悔の念に

苦しみながら生きればいい。・・・だがその先に何がある?

苦しんで、後悔して、死ぬ、その事になんの意味がある?

そこまで必死に生きる意味が見出せない、何の為に今を生きている?

じゃあ、死んで楽になるか・・・死ねばこの苦しみから解放される。

だが、それで本当にいいのか?自分は満足して死ねるのか?

奴等のやった残虐極まりない実験を、奴等に復讐を与えずに他人任せにしていいのか?!

それで火星の後継者のラボで死んでいった、火星の同胞達は満足するのか!!

出来ない、満足など出来ない!!俺が彼等の立場だったら絶対に許さない!

一人残らず皆殺しにしなければ、死んで行った者たちの想いを果さなければならない。

火星の後継者、奴等の都合で俺たちA級ジャンパーは平穏な生活を幸せを未来を奪われた!

地獄の様な苦しみを味わいながら無残に殺されていった。

殺す、殺す、殺す、殺す、殺す!!!!!!

そのためにも・・まだ死ねない!死にたくない!生きたい!

奴等に復讐を果し、この世から消し去らなければならない!

それがあのラボから奇跡的に生き残った、俺の定めだ。

その為には力が必要だ。まだネルガルの力が、ブラックサレナを超える力が・・・。



天川アキトはその後、ネルガルの新型機動兵器の開発計画に協力して

テストパイロットして試作機バンクシアと言う新しい力を得た。

バンクシア完成当初は、第三世代機動兵器『サレナ』の試作機としての性能しか無く。

今の様に特殊フレームによって、様々な状況に対応する万能機では無かった。

火星の後継者殲滅と言う実戦の中で、様々な試作フレームが実戦投与され。

それに合わせてバンクシア本体も、改良と強化を繰り返しながらその姿を変えていった。

そして試行錯誤の果てに辿り着き、完成したのが三種の特殊フレームだった。

重力波フレーム、高機動フレーム、そして一番最後に完成した傑作フレームこそ、電子戦フレームだった。

サレナ型電子フレームの、プロトタイプ機として完成したバンクシアは

マシンチャイルドのラピスを新たに乗せた事で、電子撹乱兵器の使用を可能にした。

ナデシコCの様な広域電子掌握システムは搭載されていない物の。

ユーチャリスに搭載されていた。一部のハッキングデバイスの他に

通信妨害システム(ハーメルン)やロックオン妨害システム(魔笛)など

IFS強化体質者のみ使用を可能にする、電子撹乱兵器を搭載する



最初の頃は、ラピスを俺の戦いに巻き込む事には反対だった。

火星の後継者の行なった過剰なナノマシン投与によって

俺はIFS強化体質者に近い体質になっていたから。

だから、電子フレームのテストは自分だけでも充分可能だった。

しかしラピスが頑としてその役目を譲らなかった。

『アキトの役に立ちたい、アキト一緒に居たい、アキトの負担を減らしたい』

ラピスの堅い気持ちを聞いて、結局俺が折れる形でラピスの搭乗を許可した。

そしてラピスと一緒に、バンクシアに乗っているうちに俺は・・・

少しずつ自分の心の変化に気付いていく。

憎悪と狂気だけで奴等と戦っていたはずなのに、ラピスの優しさに触れていると

壊れたはずの自分の心が。少しずつ元に戻ろうとしている。

ラピスの優しい気持ち、とても温かい想い。俺は少しずつラピスの気持ちを受け入れていった。

だが、同時に恐れも増していった。自分は何時まで生きていられるのだろう。

何時までラピスと一緒に居られるのだろうか、

俺には時間が無い。時間が・・・ラピス・・俺は・・



試作機バンクシアの特質すべき機能はなんと言っても、強力無比な二つのシステム。

通信妨害システム・通称(ハーメルン)

広域電波障害を発生させて、敵味方関係なく通信システムを完全に遮断して、

命令系統を麻痺させる。これによって組織としての連携行動を封じて

纏まりを失った機動兵器、戦艦の各個撃破が容易になる。

ロックオン妨害システム・通称(魔笛)

超空間振動を発生させて敵味方関係なく、コンピューターによる自動ロックオンシステムを麻痺させる。

これによってパイロットは手動のみでしか、ターゲットを補足する事が出来なくなり。

武器の命中率が著しく低下する。

なおバンクシアには魔笛の防御機能が付いているので、魔笛の影響を受ける事は無い。

試作機バンクシアの電子撹乱兵器(ハーメルン.魔笛)は

一対多数と言う単独作戦を前提としたシステムであり、

アキトとラピスの生存率を大幅に引き上げる物だった。

このシステムを手がけた、ウリバタケ・セイヤとイネス・フレサンジュは

アキトとラピスに生きて戻って来て欲しいと言う、純粋な思いから完成させたシステム。

そして彼等の願い通りに生き残り。最後の戦いの時を迎えようとしていた。



次回予告

ラピスの想いとアキトの想い、交差する二つの想い。

アキトとラピスはこの先どうなるのか!

ロックオン妨害システム(魔笛)の元ネタはマクロスゲーム、VFX2です。