地球ではもう直ぐクリスマス。天川アキトとラピス・ラズリはユーチャリスを駆り、

火星の後継者の残党を求めて宇宙を彷徨っていた。そんな変わらない日々を、

ラピスと共に健やかに過ごしていたのだが、天河アキトには最近悩みがあった。

「う〜・・・これでも無い・・・違う。やっぱりこっちの方が」

艦長席の周りには、山済みになったパンフレットの束が、無造作に積み上がっていた。

「ラピスは一体、何が欲しいんだ〜〜ああ、悩むな〜」

アキトはラピスが欲しがりそうなクリスマスプレゼントの選考に、夜も満足に眠れず悩んでいた。

火星の後継者の一件が片付き、アキトは完全に親バカ(ラピスバカ)になっていた。

ラピスに苦労を掛けた分、ラピスに一杯恩返しをする。

その思いが何時しか、強烈な親バカへと昇華していた。

「おっ・・これは、かなりいいな」

子供用のクリスマスカタログを開きながら、あれこれ思案するアキト

勿論カタログに載っている商品は全て、ネルガル系列の商品

会長秘書のエリナが差し入れした物だ。ちゃっかりしている。

「あ〜あ〜この服は少し派手かな〜、もう少しお淑やかな方がいいかな。」

小さな女の子へのプレゼントの定番と言えば、帽子、手袋、ぬるぐるみ、服の四点セット!

でもラピスには、他に欲しい物があるかもしれない。

例えばゲーム機、真任○堂から出ている体感型ゲーム機w○iβとか

真ソ○ーから出ている、超高画質対応のP○3αとか・・・ってありえない!!

やっぱりここは俺が決めるより、直接ラピスに聞くのが一番だ!



「ラピス、クリスマスプレゼントに何か欲しい物はあるか?」

オペレーター席で黙々と作業を続けるラピス本人に、直接聞いてみた。

ラピスはアキトの方を振り向き、少し悩んだ末、

「私、アキトの赤ちゃん欲しい〜」

「赤ちゃん?!それは無理だよラピス、俺とユリカはもう終わったんだ・・・」

もう、終わった事だ、ユリカとの事は・・・彼女には彼女の幸せがある。

天川アキトは死んだのだから、過去の幻影である王子様に囚われる必要は無い

そして俺もユリカの元へ戻るつもりは無い。

「違うよアキト、私が欲しいのは、私とアキトの赤ちゃんだよ、だから赤ちゃん産むのは私」

ラピスの発言に顎が外れるかと思うほど、驚くアキト。

これがキス程度なら、ラピスも大人になったな〜〜と言う。笑い話で済むのだが・・・

そんな洒落のレベルじゃない!一体どうしたんだラピス!!!

混乱するアキトを尻目にラピスは何故かウキウキ気分。

「なっ!何を言っているんだラピス!ラピスはまだ12才なんだぞ!

赤ちゃん作るなんて早過ぎだ!そっそれになんで俺なんだ?」

うっラピス、そんな円らな瞳で目で俺を見つめないでくれ、理性が・・って俺は何を考えているんだーー

俺のバカバカバカバカ、ラピスにそんな疚しい気持ちなど、持ってはいないんだーー

煩悩退散、煩悩退散、ふ〜ぅ、少し落ち着いた。



「アキトの事が好きだから、それにTVドラマで12歳のママって奴やっているよ」

・・・これだから最近のTVドラマは、子供達に悪影響ばかり与えるんだ!

少しは放送倫理と言うものを、TV局側も考えて欲しい物だ!

余談だか、このドラマのスポンサーはネルガル系列の会社である。アキトはその事を知らない。

「だから、それはドラマであって」

フィクションなんだよラピス。あくまでも作り話の世界の出来事。

「平安時代は、12歳でも赤ちゃんを生んでいるよ」

しかし、ラピスもめげづにアキトに食い下がってきた。

・・・どうやってそんな事調べたんだ?・・・ネットに接続して自分で調べたのか

いや、今はそんな事はどうでもいい事だ。今はどうやってラピスを説得するかが問題だ。

「昔は寿命が短かったから、それに昔と今では価値観や風習が違うでしょ」

「私、アキトの事が好きだから、私とアキトの愛し合っている証しが欲しいの」

うっいかん。このままでは俺は・・・世間から指を指される犯罪者の仲間入りだ!

既にコロニーを連続で襲撃した、超極悪犯罪者であるアキト

それ以前に、真っ黒クロスケの衣装に加えて、黒いマントにバイザーだ。

周りから見れば、アキトの姿はコスプレ野郎にしか見えない。

そんな姿で街を平気で出歩いているので、アキトは違う意味で指を指されていた。

「お母さん〜あの人、黒いよ〜」

「見てはいけません!指さしちゃダメでしょ。」

親子連れがその場から急いで離れていく、良く見ると

周りの人も見て見ないフリをして、アキトの周りを避けて通っていた。

警察官も別な意味で、見てみないフリをしていた。仕事より自分の精神が大事らしい。

それにコスプレをして公道を歩いてはいけない。と言う法律は無いので

強制的に補導する事が出来なかった。と言うか誰もしたくなかった。



「ねぇねぇアキト、私と赤ちゃん作ろうよ〜。

聖夜に赤ちゃんを作るがロマンチックだって、TVのリポーターが言ったいたよ〜」

無垢なるラピスを洗脳した報いは受けてもらうぞ!、TV局の報道責任者とリポーターよ!!

どうやら問題の放送を流した、テレビ局のプロデューサーとリポーターは、あまり長く生きられないらしい。

完全に逆恨みだが、冷静さを欠いた今のアキトに何を言っても無駄でしかない。

「だから赤ちゃんなんて、作れないって言っているでしょラピス!」

ラピスの分からず屋!どうして俺の言う事を聞いてくれないの!

ダッシュに教育を任せたのは失敗だったのか?!

そうだ、きっとそうに違いない!全てダッシュの教育が間違っていたんだ〜

『・・・(マスター、勝手に人?AIのせいにしないでください)』

ユーチャリスのメインAI、オモイカネ・ダッシュは

マスターであるアキトの理不尽な答えに、泣き寝入りしていた。

「アキト、私、赤ちゃんは三人は欲しいな〜」

手に終えない、後でドクターとエリナに相談するか、

後に二人に相談した事を、後々後悔する事になったアキト。それはまた別な話である。

それにしても可笑しい。どうしてラピスが急にそんな事を・・・

「ラッラピス、どうして急に赤ちゃんが欲しいなんて、言い出したんだ?誰かに言われたのか?」

一人だけ心当たりがある。一様確認の為に聞く

「うん?ウリバタケさんが、そう言うとアキトが喜ぶって」

「ウリバタケさんが・・・」

やっぱり、ウリバタケさんが原因ですか、どうやら地獄を見たいようですね〜

「ふっははははははーーーー」

不気味な高笑いをするアキト、ユーチャリスがネルガルの月ドックに戻った時、

ウリバタケの悲鳴が一日中聞こえたのか・・・

良かった、アキト少しは元気出たかな?最近なんか落ち込んでいるみたいだったし。

ウリバタケさんが言っていたアキト専用の、元気の出る魔法の言葉って凄いな〜

ラピスはウリバタケを勘違いしていた。そしてその事に気付くことは無かった。

まさか、自分が原因でアキトが悩んでいるとは知らず

そして、また新たな悩みをアキトが抱えるとは気付かずに・・・

「おっ〜ラピスちゃん。次はスークル水着に猫耳付けてアキトに告白してみろ」

まったく懲りていないウリバタケだった。



・・・その頃、ネルガル本社の会長室では

「アキトさんとクリスマスデート♪」

星野ルリはウキウキ気分で会長室を出た。ネルガル会長アカツキから、

アキトがクリスマスに、ネルガル管理下の月ドックに、戻ってくると言う情報を聞いたからだ。

こうしてはいられない。急いでデートプランを考えなければならなかった。

アキトの妻であるユリカさんはいいのかって?

そんな過去の事は忘れました。それに婚姻届が出てませんし、既に死亡扱いです。

これから先は、私の未来だけを考えます。今度は負けません。

もうクリスマスまで余り時間がありません。

連合軍主催のクリスマスパーティーは、ハーリー君と高杉大尉に代理を頼みましょう。

まぁ、このイベントにはリョウコさんも来ますし、高杉大尉なら喜んで参加する事でしょ。

ハーリー君は、上司命令と言う事で強制参加してもらいます。

決戦の日に向けて着々と手を打っていく。星野ルリであった。



「会長、いいんですか?」

「別にいいんじゃないの?その方が面白そうだし」

ネルガル会長アカツキ、会長秘書エリナは星野ルリの出て行ったドアを見ていた。

「ラピス君もルリ君も天川君の事を大切に想っているわけだし、

彼の沈んだ心を、彼女たちなら救い上げてくれるさ」

「そんないい加減な、・・・まぁ、確かにそうかも知れませんけど」

かつて、アキトと愛人関係になっていたエリナとしては、やりきれない気持ちだった。

でも、自分ではアキトを救うことは出来なかった。彼の深く沈んだ心を。

「今のうちに彼等に色々恩を売っておいたほうがいいのさ。

彼等には、これからもネルガルに協力的で居て欲しいし、将来的には彼等の子供達もね」

子供、つまりルリかラピスとの間に出来る。アキトの子供。

「子供ですか?そんな先の事・・・」

「マシンチャイルドの製造はもう禁止されたからね。

今後は、二人に沢山子供を生んでもらった方が、ネルガルの未来としては一石二鳥

なにせA級ジャンパーの天川君と、マシンチャイルドのルリ君とラピス君の子供だよ

どんな子供達か今からワクワクするよ。それに僕の代でネルガルを終わらせる気は無いんでね。

次の代もその次の代も。ネルガルを存続させていかなければならない。

その為の布石だよ、社員と社員の家族達の未来の為にもね」

誇らしげに自分の思惑を語るアカツキ。二ヤ付いた悪い顔が印象的だ

「会長がそんな立派な志を持っているとは知りませんでした」

思ってもいなかったアカツキの壮大な思惑。

ちゃんとネルガルの未来を考えていた事に、ちょっぴり感心するエリナであった。

「惚れたかい、エリナ君」

ナンパする時の常套手段。白い歯を光らせるアカツキであったが。



「ええっとっても」

ドサッ!苦笑しながら、エリナは会長室の机に白い書類の山を置く。

「それではその立派な志の為にも、この書類の決済を済ませて頂きましょうか」

60センチはある書類の束が、アカツキを挟んでツインタワーの様に君臨していた。

「ぅ・・・こんなに沢山?!・・・見逃してくれないかな〜。この後デートなんだけど〜」

先程とは打って変わって、弱気になるアカツキ

「ネルガルは今は忙しい時期なのは貴方も知っているでしょ!デートは私が断っておくは、

クリスマス商戦にお正月商戦、決済して頂く書類は山の様に溜まっているんですからね」

鬼の形相で迫るエリナに、アカツキは言われた通りに書類に判子を押していくしかなかった。

「ちなみに僕のクリスマスの予定は・・・」

恐る恐るエリナにスケジュールを聞く。

「そんな物あるわけないでしょ。ここで缶詰になって書類の決済してもらいます」

「ひぇぇぇぇ〜〜」

ネルガル会長室からアカツキの悲鳴が聞こえてきたとか・・・。



後書き

妖精の企みもこれでラスト。

ラピスの思惑、ルリの思惑、アカツキの思惑

シリアスには行かず、結局最後はギャグで閉めました。