麻帆良学園、全校合同の学園祭「麻帆良祭」

三日間の入場者は40万人にも達すると言う、世界でも有数な学園都市による一大イベント。

ボーン、ボーン、ボーン。打ち上げ花火が空に上がる。

現在の時刻は午前10時、第78回麻帆良祭開催の合図だ。

上空では麻帆良学園大学航空部による飛行スタントショーが開かれ。

複数の航空機によるアクロバットな飛行が行なわれていた。

「学生だけとは思えない・・・見事な演出だ」

航空機を眺める天河アキトは、自身のアーティファクト「幻影魔鏡」で召喚した、黒い着物姿のサレナと、

東南アジア系の民族衣装を着たカレンと一緒に、一般入場者口から麻帆良祭の会場へと入って行く。

そしてアキトの服装はこの世界に来て最初に買った。ビジネスマン風の上下黒いスーツに決めていた。

「・・・・・・・」

ふと、アキトはサレナとカレンを見る。

『どうかしましたか?マスター?』

「アキトさん、どうしたの?私たち何か変?」

不思議そうにサレナとカレンが、アキトに振り向いて来た。

「いや、何でも無い・・・」

正直サレナの黒い着物姿とカレンの民族衣装は、本来はとても目立つのだが・・・

そんな事を気にする人は誰も居ない、何故なら学生にしろ一般入場者にしろ、

会場内は仮装が認められているので、あちらこちらで様々な衣装を着て歩いている人達が居る。

仮衣装屋も出展しているので、自分達の姿を特に気にかける者は居ない。

精々周りと同じ仮装している人間と思われるだけだ。でもそんな彼女達を見る俺の内心は複雑な気分だった。

仮装が認められるなら、俺も本当は黒い戦闘服に着替えたかった。マントとバイザー込みで・・・。

でもカレンとサレナの強固な反対に合い。その服装は断念せざるえなかった。

『マスターにあんな恥ずかしいカッコさらせれません!!』

「アキトさんにあのカッコは似合いません!それに一緒に歩くと私達まで恥ずかしいです」

カレンまで・・・、サレナに教育を任せてから。なんか彼女は厳しくなった様な気がするのだが。

『(カレンを通じて、マスターの間接教育計画発動中)』

サレナの大いなる計画にアキトはまるで気が付かないでいた。そして何も知らずに利用されるカレン。

まぁ、知らぬが仏なのだろう。サレナの思惑を知ってしまうと、彼等は後々後悔する事になるのだから。

『・・・学生でもここまで作れるんですね〜凄いです』

そんな思惑が渦巻いている事をアキトに感じさせる事無く、

サレナも興味津々で辺りを見渡していた。そしてカレンの方も・・・

「凄いです!凄いです!!!」

大いにはしゃいでいた。やはり子供は無邪気が一番だ。

「それにしても、凄い混雑だな・・・」

アキトは辺りを見渡すが、人、人、人、辺りは人に溢れていた。つまり大混雑である。

そして学生の他に子供を連れた家族連れが実に多い。

『昼食時はこれでは大変ですね。少し早めにレストランに入りましょう』

食事を取るにもこれでは何分待ちが分からない、大混雑が予想される。

「そうだな。午後から仕事がある事だし」

アキト達は午後から特定エリアに置ける、告白阻止の仕事をしなければならない。

世界樹伝説。告白すれば100%告白が成功すると言う都市伝説。

だが、怖い事にこの世界樹は正式名称「神樹・蟠桃」と言い。魔力を持った本物の魔法の木なのだ。

22年に一度、世界樹から魔力が溢れ出して告白が確実に成功するらしいのだ。

それも永続的に告白の効果は続くらしい・・・正直そこまで行くと呪いに近いだろ。

本当は来年が22年目になるはずだったのだが、異常気象が原因で発光現象が一年早まってしまった。

この事態を重く見た学園側は、麻帆良学園に所属している魔法先生や魔法生徒を動員して

一般客や生徒達の告白阻止に乗り出す事に決めた。まぁ、魔力が漏れ出している特定エリア以外は

世界樹の力が発動する事はないので、動員する魔法使いの数もそれほど必要としないのだが・・・

表向き司書として働いているアキトの元にも、学園長から仕事の依頼が来て、告白阻止に乗り出す事になった。

だが、仕事はあくまで午後からなので、午前中は学園祭をカレンやサレナと共に楽しむ事にした。

「しかし、学園祭なんて高校を中退して以来だ」

火星のユートピアコロニーに住んでいた時以来の学園祭。

ここまで大規模なお祭りは、アキトにとって初めての経験だった。

『私は初めての学園祭です。・・・当然ですが』

ブラックサレナのAIサレナに取ってデータ上では無く、実際体験する事が出来る初めてのお祭り。

バーチャルゲームの中でなく、人と人が触れ合う事が出来る現実空間。

機械の身ではけして叶う事が無かった夢。それがこの世界に来て魔法の力で人の身になる事が出来た。

アキトの隣に立つ事が出来る。アキトに主従以上の気持ちを抱いているサレナに取って、

まさに至福の時が訪れた。この世の春である。そう・・・アキトと二人きりなら良かったのだが

「アキトさん。明日一緒に観覧車に乗ってくださいね♪」

アキトの腕はカレンによってしっかり握られていた。

『(これぐらいでは負けません!最後に勝つのは私なんです!)』

サレナのアキトに対する熱き情熱は。カレンと言う新たな強敵を迎える事によって、

より一層激しく燃え上がらせていた。アキトの至上の愛を受ける為、更なる高みを密に目指すサレナだった。

『学園祭というよりテーマパークの様ですね、マスター』

「まったくだな。東京、いや、千葉のネズミランドにも匹敵する規模だ」

アキトは学園祭のガイドマップに書かれた。各地の会場施設の説明文を読みながら歩く。

勿論、人にぶつかるようなヘマはしない。気配を読み取っていれば。

目を閉じていても、人ゴミの中で人にぶつかる事は無い。

麻帆良祭は学生達によって作られた様々なアトラクションが用意された各会場。大掛かりな仕掛けの数々

麻帆良大学工学部は実際の遊園地のアトラクションを手がけたり、テストも兼ねたりするらしい。

ここまで学生達が学園祭の出し物に本格的になるのには理由がある。

それは学園祭で上げた売上金は全額自分達の手元に残る仕組みになっている。

その為か、学園祭の出し物は年々商業化の色が濃くなり、年々派手になっていった。

学園祭期間中の三日間で数千万を稼ぎ出す。学園長者なる生徒も中には居るらしい。

そうでなくても各サークルやクラブはこの学園祭期間中に。

一年間のサークルやクラブの活動費を稼ぎ出す事が目的らしいので。

生徒達はついつい学園祭の出し物に熱が入ってしまい。暴走する事も多々あるようだ。

もっともサークルやクラブ活動に関係の無い、一般生徒も前夜祭から盛り上がっており、

地域のお祭り時期と重なる事もあり。羽目を外す生徒が多くて、

後始末に追われる先生が多いらしいのだ。ご愁傷様である。

「ねぇねぇアキトさん。私このギャラクシーウォーに行きたいんですが」

アキトの持ったガイドマップを覗くカレン。どうやらカレンは工科大が作った本格派ライトアトラクション

宇宙を舞台に繰り広げるシューティングゲームに興味があるらしい。なんか意外だ・・・。

「じゃあ先ずカレンの行きたい所に行くか」

「ありがとうアキトさん。大好きです」

そういってカレンは、掴んでいるアキトの腕に力を入れて笑顔で喜びをアピールする。

「うぐっ・・・」

アキトはちょっと腕が痛かった。さすがカレンは竜人だ、

人間ならとっくに骨が折れている程の力が、アキトの腕に加わっていた。

『マスター、次は私の行きたい所ですよ!」

サレナもカレンに対抗意識を燃やして、反対側のアキトの腕に強く抱き付いた。

「ぐはぁ!!」

サレナの身体能力はアキトと同レベル。ナノマシンの力で超人の域に居るアキトでも

同じ身体能力を持つサレナに強く抱き付かれれば、ただで済む筈が無い。

そして運が悪い事にサレナが抱き付いた際、関節技がアキトの腕に決まっていた。

「ギブ、ギブ、、痛いから、、サレナ、カレン離れてくれーーーーー」

少しの間アキトの悲鳴が辺りに響いていた。その光景を見る一般客や生徒からは

クスクスと笑い声が聞こえて来た。どうやら大衆にはアキト達の姿がコントに見えたようだ・・・。

それから少しして、アキトの異変に気が付いたサレナとカレンは急いでアキトから離れた。

『すっ済みません。マスター、大丈夫ですか?』

自分のした事に少し焦り気味のサレナと、

「大丈夫ですか?アキトさん」

何処かまだ良く分かっていないカレン。彼女には力の加減を教えないとダメだと心に誓うアキトだった。

「もっ問題は無い。とにかく先を急ごうか・・・」

アキトとサレナ、そしてカレンはまず最初に、カレンの遊びたいギャラクシーウォーに行く事になった。

その途中でサレナが何かを考えるように立ち止まる。

「どうしたサレナ?」

急に立ち止まったサレナを心配して。アキトはサレナを振り返る。

『こうして、マスターの隣を歩く日が訪れるとは、思っても居ませんでした』

サレナがアキトに微笑みを浮かべる。それはサレナの心からの笑みだった。

「そうだな、人生はどう転ぶか誰にも判らない

俺もこの世界に来てから驚きの連続さ。いい事も悪い事も含めてね」

サレナを優しい目で見つめるアキト、そんなサレナを羨ましそうに見るカレン・・・

「(私もアキトさんにあんな温かい目で見て欲しいな〜)」

『(ふふふ、カレン見てますか、マスターの瞳は今私が独り占めしていますよ〜♪)』

カレンとサレナの密かな戦いは続くのであった・・・しかし、この二人の戦いに新たに乱入する者達が

後々現れる事を彼女達はまだ知らないのであった。新たな波乱の幕開けが始まる。



その頃、麻帆良祭の会場を歩く二人の女性の姿が在った。

「なんでウチが、こんな子供のお使いをせなあかんの・・・」

巫女装束を着崩した様に着ている、関西呪術協会の女呪符使い天ヶ崎・千草

「そうは言っても、これもお仕事ですから千草はん」

ゴスロリのカッコをした神鳴流の剣士、月詠。

彼女達二人は西の長である。近衛・詠春から東の長である学園長宛の親書を預かって届けに来ていた。

天ヶ崎・千草は今から二ヶ月前、修学旅行で京都に行っていた学園長の孫娘の近衛・木乃香を誘拐して、

ナギも超えるという彼女の魔力使って、封印されていた大鬼スクナを甦らせて叛乱を企てたが

ネギ先生と一部の3A生徒の活躍により、天ヶ崎・千草の叛乱は失敗に終わった。

この叛乱での一番の功労者はなんと言ってもエヴァンジェリンだろ。

関西呪術協会の総本山陥落の報をネギ先生から聞いた学園長は、

条件付で呪いから完全に解放されたエヴァンジェリンを助っ人として京都に派遣。

そして見事エヴァンジェリンは、大鬼スクナを撃破して天ヶ崎・千草の企みを挫いたのだった。

その後、天ヶ崎・千草は捕まり、関西呪術協会の反省室で過ごす事になった。

そして今回、久しぶりに外に出られる事になったのだが、

それは東の長である学園長への謝罪の為に行かされるに過ぎなかった。

今の彼女は魔力を封じられているので、得意の呪符を使う事が出来なかった。

「それにしても仰山人がいますな〜、シネマ村でもこんなに人は集まる事はないやろ」

月詠は同じ神鳴流の剣士である桜咲・刹那とシネマ村で戦った事を思い出していた

叛乱の時に天ヶ崎・千草の護衛として雇われていた神鳴流の剣士の月詠は、今回は西の長に雇われており、

その任は魔力を封じられている天ヶ崎・千草の護衛と監視である。

「ほんまええ加減にしてほしいわ」

天ヶ崎・千草はやってられないとかなり投げやり気味だった。彼女はあまり人ゴミは慣れていなかった。

京都は観光都市で観光客が多いのだが、観光スポットが多いのでこの学園祭会場の様に

観光客が一点集中して大混雑になる事は無かった。それに京都人特有のゴミゴミした環境が嫌いだった。

もっと穏やかにゆったりした環境で一息入れたかったのだが、これでは到底それは望めない。

「愚痴を言っても始まりませんよ千草はん」

天ヶ崎・千草とは対照的にかなりお気楽な月詠。常にマイペースと言うのは戦う者にとって重要な事である。

彼女はそれを実践していた・・・いや、この場合はたぶん違うな、これは彼女の本質なのだろう。

「それにしても、時期って物を考えて欲しいわ。こんな混雑する時期にウチ送らんでもええのに」

麻帆良祭期間中は観光客と生徒で人が溢れかえるので。こうして歩くのも一苦労なのだ。

「まぁまぁ千草はん、これも罰と思って割り切ってはどうや」

相変わらずニコニコしている月詠と

「そやけど月詠はん、ウチは納得いかんわ〜」

疲れた表情でとぼとぼ歩く天ヶ崎・千草。彼女達は愚痴りながら学園長室を目指して歩いていた。

ドスン!

そんな時、誰かが強くぶつかって来た。その衝撃で天ヶ崎・千草は転倒してしまい尻餅を付いてしまう

「いたぁ、なんや一体・・」

天ヶ崎・千草は痛めたお尻を撫でながら、ぶつかって来て相手を見上げてみると・・・

そこには茶髪、金髪、パンチパーマの髪型にカラフルな色合いの薄着を着て

金のブレスレットを腕に身に付けた。30代前半の典型的なチンピラ三人組がその場に居た。

但し彼等は一様に頭や肩に包帯を巻いたり、杖を付いていたりしている。

見るからに怪我人・・・少し前に彼等は大怪我をしたのだろう。

「おいおい、姉ちゃん、ぶつかって詫びの一つも無しか」

金髪のチンピラが眼を千草に飛ばして来た。その顔は若干薄ら笑いを浮かべていた。

「なんや、アンタが先にぶつかって来たんやろ!」

当たり屋、天ヶ崎・千草は彼等のカッコからそう判断した。というかそれ以外に判断できなかった。

「どうします千草はん、面倒やからここで片付けますか?」

物騒な事を言う月詠、手に持った刀を今にも抜き出しそうな勢いだった。

「それは不味いやろ月詠はん。ここで揉め事を起こしたらウチはまた反省室に即逆戻りになってしまう。

それに此処は東の管轄地や。治安維持も東の者の仕事やろ」

面倒事、揉め事は天ヶ崎・千草はどうしても避けたかった。あと少しで自分は自由の身になれるのだ。

親書を無事に学園長に続ける仕事を終わり次第。もっとも監視と魔力の封印は当分続くのだが。

それでも自由に外に出れるようになるのだ。

反省室で長い間監禁されていた今までの生活から見て、これは大きな前進となる

その絶好のチャンスをこんなつまらない連中と揉めた挙句、失いたくは無かった。

「ほぉ、活きのいい姉ちゃん達や。どうだ俺達と遊んでくれよ〜」

「そうそう、俺達は少し前に酷い目にあったんだ。そんな可哀相な俺達を慰めてくれよ」

「楽しい事をしようぜ!」

チンピラ三人組みは彼女達の複雑な事情に関係なく絡んで来た、

しかし周りの人間は誰も彼女達を見向きも助けもしなかった。

何故なら厄介ごとを避けたいから、大衆は目を逸らしてその場を避けて通って行った。

「俺達と楽しく遊ぼうぜ」

「そうそう」

「遊ぼう、遊ぼう、遊ぼう!!」

チンピラ三人組は周りが自分達を誰も止めようとしないので、さらに調子付いたのか、

顔を歪ませて彼女達により一層迫って来た。そんな状況に天ヶ崎・千草は憤りを感じていた。

「それにしても東京もんは薄情やわ〜、誰もウチ等を心配して助けに入ってくれんとは」

天ヶ崎・千草は不甲斐ない周りの男共を強く睨んだ。その睨みに怯えたのか顔を俯いてる周りの男性陣。

「でも千草はん、ここって東京じゃなくて埼玉県やろ?」

月詠の突っ込みが炸裂する、確かに麻帆良学園は埼玉県に位置している。ここは東京ではない。

「同じや無いか、埼玉県民が通勤電車に揺られながら東京に通っているやろ。

そんな子供向けアニメがゴールデンの時間帯に確かあったはずや!」

尻を出すワンパク幼児がおりなすドタバタホームコメディーアニメ。・・・ミニヨンちんちゃん。

幼児向け長寿アニメにそんなシーンがあったような気がする。

「千草はん、それを言ったら東京の周りの県は全て同じと言う事になるんやないの?」

月詠は少し考えながら天ヶ崎・千草に質問してみた。千葉、神奈川、山梨県も同じなのではないか?

「そうどすな・・・でも、埼玉県民は他の県に比べて、東京で働いている者が多いやないの」

データ上では確かに他県より、東京に職場を持っている者が多いのも事実。

「本当に不思議ですね埼玉県民って」

「こんな地理的に言っても辺鄙な場所に、東の本拠地があるのも不思議やまったく。

本拠地と言ったら普通は雅な都に作るのが筋道やろ。まったく持って東の連中は気に入らんな〜」

チンピラ達を思いっきり無視して、月詠と天ヶ崎・千草はしょうもない雑談に耽っていた。

「無視すんじぁねぇーーアマ!」

チンピラの一人、金髪が彼女達の態度に我慢できずに声を荒げる。

「あら、まだ居たの?悪いけどあんた等はウチの好みじゃないの、だからさっさと消えてくれへんの?」

まるで眼中に無かったとでもいいだけな天ヶ崎・千草に金髪のチンピラは。

「くっ!このアマーーーーー」

金髪が怒りに任せて天ヶ崎・千草を殴ろうとする、月詠は手に持った刀を抜き払おうとした時、

「・・・どうやら、教育が足りなかったようだな」

金髪の腕は何時の間にか後ろに居た、アキトによって掴まれていた。

「なっなんや?」

「へぇ〜・・・」

天ヶ崎・千草は突然現れたアキトに戸惑いを覚える、そして月詠は別な意味でアキトに感心を抱いていた。

「・・・今回は前を違って更生指導費を要らないから。俺の善意を貰ってくれ」

アキトは金髪の腕を放した後、指をポキポキ流しながらチンピラ三人組に笑いかける・・・

アキトはサレナとカレンにアイスクリームを買って上げる為、この近くの売店に来ていたのだか

その途中でチンピラ三人組を見かけた。そして案の定チンピラ達は二人の女性に言いがかりを付けていた。

これはとても見過ごす事が出来ない。彼等を再び再教育しなければならない。

「おっおめは!!あの時の」

「ひっひぃぃーー」

「うわぁぁぁぁぁ」

アキトの純粋?な笑顔?をチンピラ三人組みは見た、しかし、彼等にはそれが悪魔の笑みに見えた。

「・・・もう一度反省しなさい」

目にも止まらぬ拳の3連撃でチンピラ三人組を壁際までぶっ飛ばす、そしてお約束なのだろう。

その場所は丁度ゴミ捨て場になっていた。

ドッガラシャンァンーーーー

チンピラ三人組は見事ゴミ塗れになって気絶していた。

そんな彼等を助ける者は誰もいなかった。自業自得である。

「ふう。あいつ等も懲りないな・・・」

チンピラ三人組に呆れるアキトだった。しかし、彼等はきっとまた懲りずに馬鹿をやるだろ。

そんな気が何となくしていた。その時はまた鉄拳制裁で彼等の悪事を食い止めなければならない。

チンピラ達にとっては迷惑極まりない使命感にアキトは目覚めつつあった。

「大丈夫ですか?怪我していませんか?」

アキトはチンピラに襲われていた天ヶ崎・千草と月詠に怪我が無かったか。さわやな笑顔を浮かべて尋ねた。

「・・・・・はぁ、怪我はしていまへん、ほんまにおおきに、・・・助かりましたわー」

アキトの清々しい笑顔を見た天ヶ崎・千草は、ちょっと顔を赤くしながらアキトにお礼を言う。

「そうですか、怪我が無ければ幸いです。では私はこれで」

彼女達の無事を確認しを終わったアキトは、その場から離れようとするが、

「あっ待ってや、あんさんの名前は・・・ウチは天ヶ崎・千草といいます」

妙にしおらしい天ヶ崎・千草。普段の勝気な彼女からは到底考えられない姿だった。

「名前ですか?天河アキトです。それじゃあ天ヶ崎さん、さようなら」

さわやかな笑顔を浮かべてアキトは去っていった。彼が笑顔を浮かべていたのは天然の性では無い

チンピラ三人組に鉄拳制裁した事で、最近溜まっていたストレスを解消してすっきりしていたからだ。

やはりアキトは子悪党に天誅を加える事が、危ない趣味として定着しつつあった。

「はぁ・・・アキトはん、なんて笑顔の似合う素敵な人や、ウチはアキトはんに惚れてしもうたわ♪」

天ヶ崎・千草はうっとりした顔でアキトの背中を追いかける。

「ほんまに素敵な人やな〜、しかもかなり強そうだし、ウチも天河はんと仕合ってみたいわ〜♪」

月詠は違う意味でアキトに興味が引かれていた。それは彼女の戦闘狂の一面なのだろう。

「そやな・・・って月詠はん!アンタ何言っていってんの!」

まさか、自分と同じく月詠が彼に惚れたのかと一瞬思った天ヶ崎・千草だったが、

彼女の言葉を聞く限り、戦士として彼と戦いたいらしい。

「えっ・・だって彼、身のこなしが只者や無いし。中々の強者や〜」

神鳴流の剣士として月詠はアキトの実力の一端を見抜いていた。

「とりあえず千草はん、彼を探すのは後回しにして、ウチ等は親書を東の長に届けに行きましょか」

何時もと変わらないニコニコした表情の月詠、

しかし瞳には新たな獲物を見つけた事に歓喜して瞳を妖しく輝かせていた。

「・・・そうどすな。後でアキトはんを捜してますえ〜」

天ヶ崎・千草と月詠は当初の目的通り学園長の居る麻帆良学園を目指した。

そして仕事を無事に終えた後は、アキトを捜す事にしたのだった。

「うっ・・・今一瞬何か寒気がしたような」

アキトは直感的に何か良くないことが、起こるのではないかと少し不安を抱くのであった。

その頃アキト達の到着を待ってたサレナとカレンは、何故か落ち着きが無かった。

『なんでしょうか、この嫌な感じは、また何処かでマスターが知らずの内に女性を引っ掛けているような』

サレナの女の直感が激しく警報を鳴らしていた。リンクシステムで表層意識がアキトと繋がっているはいえ、

実体化中はあまり精密なリンクを行なう事が出来ず、アキトの表層意識を覗く事が出来ないでいた。

「そうなんですかサレナさん・・・アキトさん。またフラフラし過ぎです!」

カレンもアキトの天然性に最近危機感を抱いていた。女性を惹きつける磁石だとアキトを思った。

その後、アキトがアスクリームを買って戻って来た時後、カレンとサレナはアキトに詰め寄り、

今まで何をしていたのか根掘り葉掘りアキトから聞き出す彼女達であった。

当然、チンピラ達や助けた女性の事も話す事となり、嫉妬心を爆発させた二人に迫られたアキトは

彼女達と二人きりの時間を作る事を無理やり了承される運びとなった。

「なんで俺ばかりこんな事に・・・」

アキトの悲しい嘆きが聞こえる。彼の修羅場人生は終わる事が無いらしい・・・



アスクリームを食べ終わった後、カレンが行きたいと言っていたギャラクシーウォーに向かう途中で

因縁の相手である、吸血鬼の始祖エヴァンジェリンを見つけた。

アキトがこの世界にジャンプアウトして、数刻も経たない内に問答無用で襲い掛かってきた少女。

あの時は貴重なマントを犠牲にして、なんとか逃げ切れたから良かったものの。

もしあのまま彼女に捕まっていたらと思うとゾッとする。吸血鬼に噛まれるなど絶対に嫌だ!

今の彼女にはガイノイドの茶々丸が同伴していない代わりに、変な人形が同伴していた。

物騒な事にその人形の両手には刃物が握られていた。あの刃物の光沢は間違いなく本物の得物。

とするとあの人形はエヴァンジェリンの使い魔の類なのだろう。

「えっ・・いや、その・・師匠これはダメです!」

「どれ、それを寄越せ、何ぁに悪いようにはせん」

エヴァンジェリンを師匠と呼んだ、外国人らしきスーツ姿の少年が彼女と何やら言い合っている。

確か少年の名前はネギ先生だったか、一緒に居たセーラー服の女子中学生がそう呼んでいた。

あれが噂に聞く麻帆良学園女子中等部の3年A組みの担任で、英語を担当していると言う

ネギ・スプリングフィールド先生か、年齢は10歳と言うイギリス出身の天才少年で見習い魔法使い

俺も学園長からある程度話を聞いている。確かエヴァンジェリンの在籍しているのも3Aだったな。

ネギ先生の父親で魔法世界の英雄であるサウザンドマスターに、エヴァンジェリンは倒されたとか。

そして登校地獄なる強力な呪いを掛けられ、魔力を極限まで封印された状態で、

麻帆良学園に囚われている事になった。それでも吸血鬼らしく満月の日にはある程度力を取り戻すらしい。

「・・・そう言えば、俺がこの世界に跳んだ日も満月だったな」

自分の運の悪さをアキトは呪うしかなかった・・・

そして、その問題のエヴァンジェリンは、ネギ先生にガキ大将が玩具を取り上げるような悪い顔で迫り、

彼が持っている、何かを取り上げようとしていた。・・・懐中時計?

『いじめっ子ですね・・・』

「・・・そうだな」

何処からどう見てもエヴァンジェリンが、ネギ先生を苛めているようにしか見えなかった。

そして当のネギ先生はエヴァンジェリンに耐えなれなくなったのか、その場から逃げ出した。

「追いかけるぞ、サレナ、カレン」

『はい、マスター』

「待って下さい、アキトさん」

逃げ出したネギ先生を追って、エヴァンジェリンとネギ先生と一緒に居た女子生徒も走り出す。

そしてアキトとサレナそしてカレンも、彼等に気付かれない距離で追跡を行なった。

「なんだ・・・・アイツは・・・」

ネギ先生を追っていたエヴァンジェリンは、どうやらネギ先生を見失い追跡を諦めた様だった。

そんなにネギ先生の持っていた懐中時計らしき物を、奪いたかったのだろうか。

ネギ先生の持っていた懐中時計は「カシオペア」と言う。

これは22年に一度、世界樹の力が溢れる学園祭の時期限定で使えるタイムマシーンである。

但し一人の術者に付き、一日程度しか時は遡れない。

超・鈴音が科学の力で作り出した超科学の産物。魔法の力ではない。

このカシオペアは超・鈴音が学園祭前日に、ネギ先生に助けてもらったお礼に貸し出した物だった。

「そこに居るのは分かっている、出てきたらどうだ天河アキト」

唐突にアキトとサレナ、カレンが隠れている場所にエヴァンジェリンが振り返り声を掛けて来た。

気付かれた!この人ゴミの中で俺の気配を正確に感知してくるとは、さすがエヴァンジェリン、

魔力を極限まで封印されているとは言え、やはり一筋縄で行く相手ではない。

「・・・・・・・」

アキトとサレナ、カレンは隠れている場所から出て行き、エヴァンジェリンの下に現れた。

「私に何か用か天河アキト」

エヴァンジェリンは不信な面持ちでアキトを見ていた。

「別に特に用は無いよ、ネギ先生とエヴァンジェリンを見かけたから追いかけただけさ」

本当にそれだしけか理由は無かったのだが、

「ふん、そう来たか」

一体何を勘違いしたのか・・・エヴァンジェリンはまったくアキトの言葉を信用していなかった。

それ所か警戒を強めた雰囲気を感じられた。ここは適当に世間話でもして場を和ませようとアキトは考えた。

「さっきじゃれ合っていた子が噂の子供先生か。誠実そうで良い子だな」

ネギ先生は10歳と言う年齢に相応しい純真な感じがした。

しかし、その瞳の奥に悲しさが秘められている事に気付いた。俺と同じで沢山の物を失った目をしている。

「ふん、坊やは未熟者で世間知らずな子供なだけだ」

エヴァンジェリンは照れているのだろうか、言葉の節々に優しさが見て取れた。

「ネギ先生の事を、随分気に入っているようだな」

見た目の年齢が近いから気に入っているとか・・・彼女に限ってそんな訳ないか、

「・・・・・・・」

アキトは知らない、エヴァンジェリンがネギの父親。ナギ・スプリングフィールドに好意を抱いていた事を、

そしてその息子、ネギに対しても複雑な思いがあることを

「坊やに手出ししたら、・・・あれは私の得物だ!」

ナギによって掛けられた登校地獄の呪いを解く為には、彼の血縁の血が大量に必要なのだ。

呪いを掛けたナギ本人は現在行方不明。生きているのか死んでいるのかすら分からない。

現状で呪いを解く可能性が有る物は。ネギの血液だけだった。

「得物か・・・・」

エヴァンジェリンから殺気を感じる。彼女にとってネギ先生は得物では無く余程大切な人なのだろう。

「心配は無い、誰にも手を出す気は無い。他人の人生に干渉する程、俺は偉くないんでね」

ああ言う子供には、裏の世界を知らず平穏無事に生きて欲しい、

もっともこの世界では、魔法は裏の世界に通じているので無理だろうけど。

それでも子供達により良い未来を歩んで欲しい。俺には願う事ぐらいしか出来ないが。

「天河アキト、お前の言う事を素直に信じろと言うのか?裏の世界に通じる者が持つ独特な雰囲気、

そして薄暗く底が見えない心の闇、・・・何よりお前からは死の気配が漂ってくる。

私より遥かに多くの者達を殺めているな、天河アキト」

エヴァンジェリンの瞳が、アキトの心の奥底を覗こうとする。

「・・・・・・・・」

アキトは何もエヴァンジェリンに言い返せなかった。

北辰達による隠ぺい工作の分もあるとは言え、結果としてコロニーを襲撃して

1万人近くの軍人、民間人を問わず殺してしまった。その中にはまだ小さな子供だって居ただろ。

それとは別に、火星の後継者に協力している企業や国の研究所を何箇所も襲って、

直接、何百人もの警備員や科学者を殺した事もあった。彼等にも家族は居ただろ。

ネルガルがアキトの両親を謀殺した過去、今のアキトにとってネルガルを責める事は出来ない。

アキトはそれ以上の鬼畜にも劣る行為を行なってしまったのだから。

その他にも戦艦や軍港の破壊工作もした。クリムゾンの輸送船も沢山落とした

全ては火星の後継者に対する復讐の為。

自分の未来を奪い取った物達へ私的制裁を成す為に。彼らの未来を奪い取る為に。

道徳も良心も捨てて、憎悪を糧に破壊と殺戮に生きた。そして復讐の果てに残った空っぽの心

一様この世界に飛んで五感と寿命が治り、さらにサレナに説得されるという形で立ち直りはしたが、

それでも自身の中に今でも住まう地獄の業火の様な心の闇を、消し去る事など永遠に出来ないだろう。

全てを忘れて楽に生きるなど、殺してきた者達への冒涜でしか無い。

たがら彼等の事は俺が死ぬまで絶対に忘れてはならない。これが自分に架した十字架なのだから。

「確かに俺は多くの者を殺めた罪人だ。誰に取っても過去を忘れ去る事は出来ないだろう。

それでも人は前に進んで行くしかない。過去を振り返らず、困難と分かっていても前に進む。

人は変わる事ができると思うんだが・・・君はどうだいエヴァンジェリン」

後悔と悲しさを含んだ瞳をアキトはしていた。此処最近はカレンとサレナの楽しい思い出により。

見せる事が少なくなっていた。虚ろな表情をアキトは浮かべていた。

そしてそんなアキトを表情を見たエヴァンジェリンは。

「ふん、お前の過去など私には関係の無い事だ・・・」

「・・・そうか」

エヴァンジェリンは俺の事を信じてくれたのだろうか。いや、別に彼女が信じれくれなくても構わないだが。

「私と坊やは夕方頃に武道会に参加する。・・・興味が有るなら見にこい」

少し照れながらエヴァンジェリンはアキトにそう言い残し、その場を去っていった。



「少し寄り道してしまったが、予定通りギャラクシーウォーに向かうか」

エヴァンジェリンを見届けた後、アキトはサレナとカレンに振り返り意思確認を行なう。

『はい、時間的にも問題ありません』

「早く遊びたいな〜」

カレンは待ちきれないと言った感じで、少しそわそわしていた。

それから五分後、目的地であるギャラクシーウォーの遊戯施設に来ていた。

工科大学の作ったライトアトラクション「ギャラクシーウォー」には既に行列が出来ていた。

アキト達も行列に並び30分後、遂にアキト達の順番がやって来た。

「遂に俺達の番か・・・」

アキト達の乗り込んだのは三人用のゴンドラで、ギャラクシーウォーのゲームプレイを始める。

『これは凄いですね。実際のテーマパークにあっても可笑しくない代物です』

スクリーンに展開される宇宙空間、そして宇宙船と戦闘機らしき物体。

これ等の敵を手に持った銃で打ち落としていき、得点を稼ぎ出していくゲームなのだ。

「敵の動きが単調。しかも直線行動ばかりだ」

アキトは狙いを外す事無く、必中で目標の敵戦闘機と敵宇宙船を次々と撃破していく。

そこには一切の無駄が無く、確実に敵の戦闘機と宇宙船をスクリーンから姿を消していった。

「えい!・・・とお!???・・・そこ!」

アキトとサレナが余裕でプレイしている隣で、カレンは一人夢中になってプレイしていた。

ウィィィィンンンン

そして無事にゲームは終了した。アキト達はゴンドラから降りて、

外にある得点ランキングの掲示板を見に行ってみると。

「まぁまぁの結果だな」

アキトが出した成績は撃破率98%、得点は現時点で最高記録の530.00

『さすがマスター、機動戦で養った動体視力、機動予測、そして見事な射撃技術です』

そう言うサレナも撃破率97%、得点は現時点で2位の520.00と続く。

ちなみに3位は撃破率95%でNEGIなる人物が500.30で続く。

そしてカレンはというと・・・。

「うう・・・私、これに向いてないよ・・・」

撃破率24%、得点は102.50、当然ランキング外である。カレンには射撃は向いてないようだ。

落ち込む彼女をサレナとアキトで慰めた後、アキトは一つの提案を行なう。

「それじゃあ次ぎ行くか、そう言えばネギ先生の担当している3Aが、

面白いオバケ屋敷をやっているらしいね。さっき受け付けの女子生徒から聞いたよ」

勿論、その女子生徒はアキトの素敵な笑顔にノックダウンしていた。

『・・・へ〜え〜。そうですか・・・』

「アキトさん。少し離れるとこれですか・・・」

カレンとサレナは頭を抑えてしまった。また天然を生かして知らずの内に女性を堕としてしまった様だ。

「どうしたんだろ。二人共・・・」

頭を抱える二人を心配するアキト、鈍感なアキトに彼女達の苦労が分かるわけがなかった。

「負けません!!」

『ええ、これぐらいで挫ける私ではありません』

カレンとサレナは二人で照らし合わせたようにアキトの両脇を固める。

これ以上お邪魔虫が間に入る事は許さないと、周りにアピールさせる狙いもあった。

「あははは、二人とも随分と甘えんぼさんだね」

しかし、アキトには彼女達の想いがまったく届いていなかった。

それ所か二人の好意をまったく違う意味で捉えていた。

「『・・・・鈍感!』」

ギャラクシーウォーの遊戯施設を後にしたアキト達が次に向かった場所は

噂のオバケ屋敷があると言う麻帆良学園中等部の3Aクラス。

オバケ屋敷は盛況なのだろうか?結構な行列が出来ていたのでその行列にアキト達も加わる事にした。

オバケ屋敷自体は学園祭で有り触れた物だが、ここは少し変わっていた。

まず、名前からして「ドキ、女だらけのおばけ屋敷」って何だよそれ・・・でもガイドマップにそう書いてある。

『結構人が並んでいますね・・・』

「ああ、人気がある証拠だ・・うん?・・あそこに居るのはネギ先生か?」

ネギ先生が吸血鬼らしきカッコをして、オバケ屋敷の呼び込みを行なっている。

中々可愛い物だ、それによく似合っている。そしてもう一人、彼のお友達だろうか、

犬の着ぐるみを着てネギ先生と同じ様にオバケ屋敷の呼び込みをしている少年が居た。

年齢的にはネギ先生と同じくらいだろか・・・

『どうしますか?ネギ先生に挨拶でもしますか?』

サレナがアキトに尋ねる。社交辞令をするべきか否か、

今はプライベートな時間だから社交辞令の必要は無いが。根が真面目なアキトはネギ先生に挨拶することにした。

「そうだな、裏の仕事に関わる者としてネギ先生に挨拶しておくか」

そう言ってアキトはサレナとカレンをその場に残し、列から一人抜け出してネギ先生の下へと向かう。

その頃ネギ先生は突然現れた、初めて会う青年に戸惑いを覚えてしまった。

「始めましてネギ先生、俺は天河アキト、図書館島で司書を勤める事になりました。

昨日、ネギ先生に世界樹の一件の時に紹介出来なかったので、今日改めて挨拶に来ました」

ネギ先生は昨日、麻帆良学園に居る魔法生徒や魔法先生を世界樹広場で紹介され、

犬上・小太郎や桜咲・刹那共に、そこで世界樹に付いての説明を受けたのだった。

アキトは昨日の夕方頃に学園長と話し合った結果、司書をすることになったので、

昨日の時点でネギ先生と直接面識を持つことは無かった。

「はぁ、それはご丁寧に、僕はネギ・スプリングフィールドです。宜しくお願いします天河さん」

ネギ先生はアキトに一礼する。

「ネギ先生、私も午後から世界樹の仕事を行いまでの、その時はお互い頑張りましょう」

ネギ先生の警戒心を解く為に、アキトは軽く笑いかけてみた。

「あっはい、がんばります」

アキトの笑顔を見た事によりネギ先生は、アキトに対する警戒を解いて自然体で向き合ってくれた。

「では、俺は列に戻らせてもらいます。3Aのオバケ屋敷を楽しみしています」

アキトはそう言って、サレナとカレンの待っている列へと戻って行った。

「小太郎君・・・どうしたの?」

何故かアキトの後を目で追っていた犬上・小太郎を不信に思ったネギは彼に声を掛ける。

「・・・ネギ、お前何も気が付かなかったのか?」

犬上・小太郎は真顔でネギを見つめていた。

「えっ何が?」

犬上・小太郎は軽くため息を付く。

「これだから西洋魔術師は温いんや。あの兄ちゃん・・・只者やない。気が付かなかったのかネギ?」

犬上・小太郎は鋭い眼差しを行列に戻ったアキトに向けていた。

「えっ・・・そうなの、小太郎君?」

ネギは全然気が付いていなかった。

と言うかアキトの事を優しそうなお兄さん程度にしか認識していなかった。

「あの兄ちゃんは魔力の気配を隠していたようだが、お前に近い量の魔力を隠し持っとる感じがした。

それに立ち振る舞いにまったく隙が無かった。あそこまで完璧に隙がないのは逆に恐ろしいわ。

ありゃ〜かなり戦い慣れてる証拠や、たぶん俺やお前よりずっと強いはずや。楓姉ちゃんでも勝てへんやろうな」

犬上・小太郎はアキトに自分に近しい気配を感じ取っていた。

裏の世界に関わる者が持つ特有の気配を、それも戦場ではけして遇いたくない、

自分より遥かに格上の闇の気配。エヴァが言う所の死の気配を漂わせていた。

表の人間にはけして分からない。裏に身を置く者のみがそれを感じる事が出来る。これは一種の本能だった。

「そんな凄い人が身近に居たなんて、全然気が付かなかった」

犬上・小太郎の話を聞き。感心した様に彼を見るネギ先生。そこで少し疑問が沸いた。

「あれ?」

自分は図書館島には比較的よく行っている。あそこには宮崎・のどかさんが居るから・・・

でも図書館島でアキトを見かけた事は今まで一度も無かった。

そう言えば天河さんは先程、司書を務める事になったと言っていたけど、前は違う所に居たのかな?

「今度、天河さんの事をエヴァ師匠に聞いてみよう」



その頃、アキト、サレナ、カレンの三人は。

3Aの出し物である「ドキッ!女だらけのおばけ屋敷」の中を楽しんでいた。

「可愛いですね♪」

『中々よく作られています』

可愛い子猫と子犬のオバケ達。アキト達が選んだのは、全年齢対応の可愛さ三ツ星の「ゴシックホラー」だった。

他にも15禁推奨「日本の怪談」や、18禁推奨「学校の怖い話」と三つのコースが用意されており。

客の好みよってコースを選択する事が出来る。そして対応年齢が上がるにつれて、より怖くなっていく仕組みだ。

中々趣向が凝らされている。行列が出来る理由もこんな所だろ・・・。

「ああ、可愛いオバケ屋敷だ」

アキトもオバケ屋敷を意外に楽しむ事が出来た。怖いだけがオバケ屋敷では無い、

可愛さを追求したゴシックホラー、これは逆転の発想だ。小さい子も楽しめると言う事もあって、

家族連れで気軽にオバケ屋敷の中に、入る事が出来る内容となっている。

『楽しかったです』

「もう一度来たいですね」

サレナとカレンも大満足の様だ。オバケ屋敷を出た後、アキト達は今後の予定を話し合う事になった。

「さて、少し早いが、レストランが混まない前に昼食を済ませるか」

アキトは温和な笑みを浮かべて、カレンとサレナを振り返る。

『そうですね。少し早いですが昼食にしましょう』

「お肉は少なめの料理をお願いします・・・アキトさん」

カレンは相変わらず肉が苦手なようだ。まぁ直ぐに好き嫌いを治せるわけがないのだが。

元コックとして、好き嫌い無く料理を食べて貰いたい物だ。

「ふう、仕方が無いな・・・野菜料理が中心のレストランがあるって、ガイドマップに載っていたよな」

アキトは確認の為に、手に持った学祭のガイドマップを捲っていく。

『マスター、たぶんこれです。お料理研究会が主催している、野菜専門料理店ベジタブル』

サレナはアキトの持っているガイドマップのある店を指差していた。

「何々、当店は野菜好きによる野菜だけの料理です。学園で育てた無農薬野菜をご堪能くださいか・・・」

「わぁ〜、アキトさん。私この店で食事がしたいです」

どうやらカレンも気に入ったようだな。それならこの店で昼食を取る事にしよう。

場所は世界樹広場から徒歩5分の所に店を出しているようだな。

『ではマスター、店が混まない内に行きましょうか』

「ああ、そうするか」

現在の時刻は11時30分。恐らく12頃にはレストランは混み始める。

アキトとサレナ、カレンは話し合いの結果。少しは早めの昼食に入った。

午後からは告白阻止の為に、見回りをしなければならないからだ。

後編に続く・・・



後書き前編

まさか、天ヶ崎・千草と月詠が麻帆良祭に絡んでくるとは、

そして一発キャラだと思われたチンピラ三人衆が再登場するとは思ってもいまい。俺流のサプライズや

さて、次回のアキトの活躍は(サ○エさん風)

@「天ヶ崎・千草と月詠の告白?襲撃!修羅場再び」

A「キスターミネーターと化したネギ先生の暴走阻止大作戦!」

B「波乱の幕開け!まほら武道会予選」の三本でお送りします〜

でも、アナザーストーリーの方を書きたいから当分此方はお休みします、中途半端でゴメンなさい。