.NADESICO 

Prologue



「アカツキ、俺はこの世界から消えようと思う」

史上最悪のテロリスト、テンカワ・アキトはそう親友に述べた。

今更戻れるとは思っていないし、何より自分は自分が許されるべきではないと思っているから、と。

復讐すべき相手は消え、妻を救う事ができ、何も残っていない自分。

死んで罪を償おうとは思っていないが、この世界では自分はもう生きていけないと。


「ラピス君はどうするんだい? わが社も一枚岩ではないんでねぇ。

 ラピス君ともども君を軍に渡そうとする奴等もいる。

 ―――何より彼女は君とはなれる事を好ましく思っていないようだけど?」

「アキトは私が要らないの? 私が役立たずだから?

 お願いアキト。私も一緒に連れて行って」


アカツキが話しを譲るように喋ると、すぐにラピスが言った。

アキトのいない世界は私の生きる世界じゃないと。


「此処まで言われても置いていく気なのかな? テンカワ君。

 君がそんな薄情者だとは思ってもいなかった。

 今まで力を借りてきたんだ、これからは彼女のために生きる事ぐらいやってみせなよ」

何時もの軽薄さは見えず、会長としての顔だった。

親友を救えない事が悔しいのだろう、硬く握っている手からは血が流れていた。

ポケットから何か物を出した。


「これはヤマサキの研究所から見つかったものだ。

 ドクターの解析によると、君の五感も完全ではないが戻るものだそうだ。

 ―――その事を理解するのに五時間の説明があったけど」


最後の方で苦笑いをしながら言う。これが最後の言葉になると。


「君にはもう二度と会わないことを祈るよ。何処でもいい、何時でもいい。

 ただ、幸せになる権利は君にもあると思うよ?」


そういうと後ろを向き、手を振りながら歩き出す。

―――目には涙が溢れていた。

聞きなれた、ボソンジャンプの音。

其処には、誰も居なかった。


「やれやれ、みんなへの説明が大変だなぁ。一体どうしたことやら。

 ―――まぁ、これが残った僕の仕事。かな?」










あとがき

はじめまして、ゆうがおと申します。
この作品は.hackシリーズのネタバレを多く含みますんでよろしくです。
またオリジナルの設定、キャラ等色々とあります。そういうのもよろしくです。
うちのアカツキはいい男です。友人のために泣きます。でももう出ません。多分。
ちなみに、SS初心者なんでアドバイス貰えたら幸いです。
これからよろしくお願いします。