街から離れた森の中、その場所に日本には似つかわしくない城が建っている。
その城の地下で今まさに表の世界では語られぬ戦争の準備が進められている。
地下には少女がおり、少女を中心に淡い光の陣がその存在を誇示しているかのように輝いている。
少女の名はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。戦いへと赴く者である。
少女が呪文を紡ぐ。それに呼応するように彼女を囲む陣の光が次第に強くなる。






体中が熱を帯びているのが分かる。それは今最強のサーヴァントを呼び出し、そして聖杯戦争で勝ち残るための儀式を行っている証拠。

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」

今、自分はこの戦いのために、聖杯を手に入れるためにここにいる。

「聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ」

それがアインツベルンの悲願であり、己の存在理由。

「誓いを此処に。我は常世総ての善となる者、我は常世総ての悪を敷く者」

そのためには大英雄の召喚は必要不可欠である。
故に此処での失敗は許されない。

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

瞬間辺りを暴風が襲い光が消えうせる。
光が消えたのは儀式の反動の所為である。
迸る魔力に確かな手ごたえを感じた。
来た。今私の目の前には彼のギリシャ最大の英雄がいるはず。
そして、再び私の目に光が戻り目にしたのは

「ん?なんだここは?」

………ソウイウアナタハダレデスカ?







運命の閃光 第一夜 〜召喚〜







今私の目の前には私が呼び出したであろうサーヴァントがいる。
サーヴァントがいるのは当たり前だ。私が呼び出したのだから。
しかし問題はこのサーヴァントが何者かという事だ。当初の予定では大英雄・ヘラクレスを呼び出すはずだった。
しかし目の前にいるのは神話に語られているヘラクレスとは考えられない。いや、はっきり言って英霊にさえ見えないが。
だから訊ねる

「あなた、誰?」

と。私の声に反応して男がこちらを向き

「ん?あ〜、いきなり呼び出されて混乱してて・・・ちょっと待っててくれ今情報を整理するから」

………混乱?なにか召喚に不手際が有ったのだろうか。
しばらくうなりながら眉間にしわを寄せていたがすっと目を開けると

「ああ、すまん。どうやら聖杯戦争に呼び出されたらしいな。で、君が俺のマスターでいいのかな?」

真っ直ぐな視線で私を見据えながら答えた。
それに対して自分も

「ええ、私があなたのマスター。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ」
「そうか、イリヤスフィールという名前か」
「ええ、そうよ。私のことはマスターか、もしくはイリヤって呼んで」
「ではイリヤと。ここに契約は成された。今この時より俺はイリヤの力となることを誓おう」

この瞬間、私も聖杯戦争の参加者となった。もはや後戻りはできない、生き残り聖杯を手に入れるか死ぬかその二択しかない戦いに。
契約はしっかりと結べた。後やることは

「で、あなたの真名を教えてくれないかしら」
「俺の真名か……」

サーヴァントの強さを知る事。それには真名を聞くのが一番早いのだが。
だが男は口を閉ざしてしまった。なんだろう、とてもマイナーな英霊なのだろうか。

「怒らずに聞いてくれるか?」
「?内容によるけど」
「……無い」
「え?」

今なんていったのか聞き取れなかった。…いや理解しようとしなかったのかもしれない。

「悪いけど、もう一度言ってくれない?」
「だから無いんだよ。…いや正確には真名の部分だけスッパリ抜け落ちてるとでも言うか…なんと言うか…」
「はぁ!?」

真名がわからない。それはつまりどの程度の強さなのかも分からないという事。
……冗談を言っている雰囲気でもないし本当に真名がわからないらしい。

「あ、でも通り名って言うかそんな物ならわかるぞ」
「……教えて」
「ハイライトだ」

ハイライト…?そんな通り名の英霊なんて聞いた事が無いし知らない。
どうやらマイナーなんてものじゃないようだ。

「はぁ、真名はもういいわ。じゃあ、あなたのクラスを教えて」

これも重要な事だ。クラスがわかればそれなりに戦略が立てられる。
セイバー、ランサーなら接近戦。
アーチャーなら遠距離で常に敵と距離を保ちながら戦う。
そういった戦略の為クラスだけでも知っておきたい。
しかし

「俺のクラスか。アンサーのサーヴァントだ」

目の前の男からまたも予想してない言葉がでてきた。
アンサーという単語が。

「アンサー???」
「ああそうだ。この場合『答えし者』という意味かな。おそらくは」

・・・どうやらイレギャラーのようだ。

「…アンサー、あなたの得意とする戦い方は?」
「特にコレといってないかな」

どうやら自分は本当についていないようだ。
ヘラクレスを呼ぶつもりが、マイナーすぎて真名もわからない、おまけにクラスもイレギュラークラス。得意な戦術も無い。
もう頼りの綱は

「そ、そう。じゃあ宝具は?英霊だったら宝具ぐらいあるでしょ?」

まさか無いということは無いだろう……たぶん、おそらく、きっと。

「宝具か。それなら自慢のがある」
「本当!」
「ああまかせな」

どうやら宝具だけはちゃんとしたのがあるらしい。
アンサーが腕を前に突き出すと宝具が現れた。
そう無骨ながらしっかりとした『剣』の宝具が。

「これが俺の宝具だ」
「剣の宝具!?あなたセイバーじゃないのに剣が宝具なの!?」
「ん?ああ、俺はセイバーになるほどの腕じゃなかったからな。まあそれなりに上手く扱えるけどな」

剣が宝具なのにセイバーじゃないなんておかしな話だ。しかし今重要なのはこの剣の能力だ。

「で、この剣の力は?『自慢の』なんていうからには相当のものなんでしょうね」
「その剣は決して折れない剣だ」

……今なんて言ったのだろうかこの英霊は。

「今なんて?」
「決して折れない、といったんだマスター」
「何?その能力は」

少し怒気を含んだ声でたずねる。
その問いに対しての答えはというと。

「実はその剣は能力は強力だったんだが何故か酷く脆くてな、真名を開放するだけで悲鳴を上げていたんだ。いくら強力な能力でも折れてしまっては意味が無い。そこで『決して折れない』という概念を付加しはずなんだが」
「はずなんだが?」
「それと同時に制限が掛かったように真名開放ができなくなった」

どうしてなんだろな〜、とハイライトは首をかしげながら呟いている。
ありえない。この英霊はどれだけ規格外な存在なのだろうか。…悪い方向に。
当初、ヘラクレスを呼び出すつもりだったのに何故こんなのが呼び出されてしまったのか?
しっかりと儀式をしたし、触媒だってヘラクレスの遺物を使った。しかし召喚されたのは真名なし戦術なし宝具使用不可。
考えれば考えるほど怒りがこみ上げてくる。

「だが安心してくれ、俺にはま…」
「何が安心してなの!?何を安心すればいの!?宝具はダメ!クラスもイレギュラー!さらに、どこの英霊かもしわからない!!これのどこに安心すればいいの!!」

安心してくれ、そう聞こえた瞬間に我慢の限界を超えてしまった。
堰を切ったように言葉があふれ出す。
おまけに視界も涙でぼやけて見える。呼吸も荒くだんだん目の前が暗くなってきた。足がふらつき今にも倒れそうになる。
おかしい、ただ怒って興奮しただけなのに。そこであることに思い至る。
召喚の影響。並みの魔術師は召喚に魔力を使いきりふらふらになる、あるいは気を失う事もあるらしい。自分はマスターとしての能力なら並みの魔術師なんて遥かに凌駕している。けれど召喚後にあれだけわめけば気を失うだろう。

「――――――――――」

アンサーが何か言っているようだけれどももう聞こえない。
こうして闇の中に意識を沈めていった。







「おっと、危ない危ない」

ぽふ。
そんな音が聞こえそうなくらいすっぽりと倒れそうになった幼きマスターの体を抱きとめる。

「やれやれ、気を失っちゃったか。まぁ無理もないな」

自身のマスターを見やりながらハイライトは呟く。

「聖杯戦争か…。まぁ、巻き込まれたからには存分に暴れますか」

己のためにも、そして

「このロリっ子の為にもな」

自分にまた現世を楽しむ機会を与えてくれたのだから。
願うべき事など特にない。強いて言えば第二の生ぐらいの自分が、とても英霊とは言いがたい自分が何故この争いに呼ばれたのかは知らない。
でも、いやだからこそイリヤのことを守る事を誓う。今の自分の存在意義を持つ為に。

「それに、ちっちゃくて可愛いしな、イリヤは」

まぁ、そんな理由もあるが。

「さてと、こんな薄暗くて寒いところにいつまでもいる訳にはいかないな。主に我がマスターであるイリヤのために」

まずは寝床を探してから周辺の様子を(ガチャ 

音を立てて扉が開いた。
そして扉に向こうから一人の女性が顔を出し

「お嬢様!先程なにやら叫び声のようなものが……」

瞬間、きまずい雰囲気が辺りを包みだした。
ここで今の状態を整理すると。

・部屋の中には見知らぬ男が
・男の腕の中にはイリヤがいる
・イリヤは気を失っている
・なにやら叫び声が聞こえた(女性視点)

このことから予想しうる最悪なものは。

――――幼女に襲い掛かる変質者――――

であろう。
今更無駄だとはわかる。今までの座に登録されてきた記録も無駄だと叫んでいる。
しかしあえて抗う。

「あ〜、少し状況の説明をさ「お嬢様に何をしている変質者め!!」……ん、やっぱ無駄か」

全ての状況が逃走を許さないことなど直感で分かっていた。
これが己に課せられた運命だと諦めている。
誤解など慣れっこなのだから。









あとがき?
なんかネタでweb拍手でやったものが具現化してしまったものです。
言い訳はしません。純粋にコレが俺の精一杯の出来なのだから。
初めてだろうがなんだろうが出したからには完結したいものです。
でも自分遅筆なんで気長に待ってて下されば幸いです。
あと、この作品は言わずもがなハイライト氏がモデルの主人公です。
しかし氏が本当にこんなだとは思わないで下さい。あくまで自分の想像ですから。
最後に、この作品は氏に対する尊敬が五割、憧れが三割、残りが■■■です。
ではまた第二夜であえたらいいですね?



感想。
ちょっ、えっ、まじ?
やべぇ……なんか恥ずかしいはずなのに逆におもしろいぞ。
俺にMっ気は無い筈なのに……。
次回も期待してみますよー。